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企業内保育所の実態

近年、育児をしながら働く女性の活躍をサポートする民間企業が増えています。
「企業内保育所」開設もその取り組みの1つ。
背景には待機児童問題や人材確保なども挙げられますが、
その経緯や利用者の反応は実際のところどうなのでしょうか…。
企業内保育所となっているポストメイト保育園・ホテルグランヴィア岡山(ホテルグランヴィア岡山、岡山市)、ちるりら保育園(シーアール物流、岡山市)、美和保育園(倉敷中央病院、倉敷市)の3保育園に現状などをうかがいました。

Q.1 企業内保育所を導入した経緯・理由をお教えください。

●ポストメイト保育園・ホテルグランヴィア岡山
2016年10月にホテルグランヴィア岡山の別館にオープンさせました。当初はホテルグランヴィア岡山との連携施設として設置する予定でしたが、2016年度から内閣府が設置・運営を支援する「企業主導型保育事業」の施行に伴い、複数の企業との連携施設として定員の約半数のお子様を預かり、残りの約半数は地域が待ち望んでいた待機児童対策として一般利用を可能にしました。


●ちるりら保育園
昨年9月に事業を開始しました。物流業界は長年、慢性的な人材不足に悩まされており、働く意欲はあるのに社会復帰できない世帯に預け先を提供することで、自社の従業員確保につながると考えたのがきっかけです。性別にかかわらず、働きやすい環境をつくり、結婚・出産などによってキャリアをストップすることなく働き続けてもらいたいというのも大きな要素ですが、待機児童については社会問題であり、自社の従業員の福利厚生のためというよりも社会貢献・地域貢献の意味合いの方が強いと思っています。

●美和保育園
倉敷中央病院では働きやすい職場環境づくりのため、交替勤務看護職員や医師の育児支援として1993年より院内保育園を設置。結婚・育児のための離職防止や福利厚生の充実による採用促進にもつなげています。2015年4月から保育所型事業所内保育事業として倉敷市の認可を受けています。


Q.2 導入後の利用者(従業員)の反応を教えてください。

●ポストメイト保育園・ホテルグランヴィア岡山
昨年育休に入った従業員をはじめ、従業員採用に関しても施設はとても好評を得ています。保育料は応分に個人負担ですが、通常の認可保育園のおそらく6割程度なので経済負担軽減が図れます。預かりは日曜から土曜の週7日制で、基本時間は7時から20時までですが、22時まで延長が可能。預け始めた初日からお昼帰りもなく、給食は自園調理なので岡山市認可保育園と同じ献立で提供しています。ホテルグランヴィア岡山以外の企業との契約は現在10社を超え、その利用者たちからも好評です。

●ちるりら保育園
就業中の従業員はすでに預け先を確保していたため、すぐに利用につながったケースはありませんが、開園後、「保育園があるのであれば就職したい」と新規採用につながった例もありました。また、保育園の定員減を理由に預け先がなくなり困っていた従業員からは同園が受け皿となったことで「すぐに預け先が確保できてホッとした」という声をいただきました。

●美和保育園
保育園設置時の保育運用を見直し、保育時間の変更や勤務時間帯以外の保育実施・給食の開始などにより利用者の満足度アップにつなげています。

Q.3 導入後に分かった課題と今後の対応策を教えてください。

●ポストメイト保育園・ホテルグランヴィア岡山
運営を開始してまだ1年余りで、かつ、内閣府の事業施行も年数が経っていないので、さまざまな細かい点でトライ&エラーしながら検証していくことはあると思います。企業枠と地域枠の受け入れを半々にしていますが、時期によってはバランスが保てず、岡山市の待機児童の現状を踏まえて地域枠をより多く受け入れられるようにするなど、時期に応じてフレキシブルに対応していく必要があり、所管の省庁や関係機関などと今後も連携を密にとっていきたいと考えています。また、コンプライアンスを十分に厳守し、さらに複数園の開園を行い、居住地型保育園と勤務地型保育園との融合を図っていきたいと思います。


●ちるりら保育園
企業主導型保育事業という制度の制約があり、企業枠に空きがあってもそれに該当しない世帯のお子様は預かることができないため、当園についても待機児童が発生しています。公平に利用していただけるように、園独自の利用ルールの見直しなどを随時行っています。また、認可保育園が空くまでの利用と考えている保護者が多いのですが、子どもにとってはあちこち転園して先生や友達が何度も変わるより、できるだけ1カ所で入園から卒園まで在園することが望ましいと考えており、保護者が納得して長く預けようと思える園づくりに力を入れていく方針です。

●美和保育園
育休後、住所のある近隣の保育園を希望しても待機児童の問題などで入園できないため、院内保育園に入園するケースが増加しています。0歳児の子どもの増加により保育士確保が必要になっていますが、保育士自身も交替勤務となるため確保が難しいところです。

☆編集後記☆
私も2人の娘を育てるママ。取材を通じ、企業内保育所は働くママにとって選択肢の幅を広げてくれるものだと思いました。ただ、出会ったママたちの話を聞いていて感じたことは、「ママに専念する時間があってもいいのではないか?」という疑問です。今は子どもがベビーのころから保育園に入園していないと後々入りにくいと聞きます。けれども、仕事は代わりに対応してくれる人がいるかもしれませんが、「ママ」は子どもにとってたった1人であり、かけがえのない大切な存在。もちろん、企業内保育所のように従来と違ったスタイルで待機児童の受け入れの間口を広げることも大切ですが、働き方や会社のルール、社会全体で「ママに専念できる時間」が持てるような仕組みができれば、「待機児童」の意味も今と少し変わってくるのではないでしょうか。また、「パパに専念する時間」もできれば、男性の育児参加がより当たり前になり、安心して子どもを産み育てる環境になると思いました。(I)

*各施設data*

◆ポストメイト保育園・ホテルグランヴィア岡山
岡山市北区駅元町1-5
開園日/日曜から土曜までの週7日制
保育時間/7:00~20:00(延長保育~22:00)
定員/50名
◆ちるりら保育園
岡山市南区築港元町14-1(山陽マルナカ築港店2階)
開園日/月~金(土日・祝日は要予約)
保育時間/7:00~18:00(延長保育~22:00)
定員/60名
◆美和保育園
倉敷市美和1-1-1
開園日/年末年始の休み以外は毎日
保育時間/日勤 7:00~19:00
準夜 15:00~23:45
深夜 23:45~8:30
定員/随時受付のため特に設けておりません。
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