Home>新聞記事

[ 新聞記事 ]

子どもへの怒り どうコントロール 日本アンガーマネジメント協会・野村さんに聞く 6秒数え落ち着く 指示分かりやすく 親子の絆深めるチャンス

/掲載日:2020年05月01日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:13ページ/

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、岡山県内の多くの学校が再び休校となり、外出自粛も長引いている。子どもたちが家庭にいる時間が長くなると、保護者の心理的負担も増してしまいがちだ。過度なストレスは虐待など深刻なトラブルにもつながりかねない。イライラを和らげ穏やかに過ごすにはどうしたらいいのだろうか。専門家に具体的な対処法を教えてもらった。(則武由)

 「子どもの時間管理が悩みの種」と話すのは、小学4年生の娘がいる星野恵美子さん(37)=岡山市北区。生活が乱れないよう学習などその日にすべき「やることリスト」を作っているものの、後回しにしてテレビを見たりゲームをしたりする姿を見ると、ついつい口調がきつくなりがちに。

 「休校に加え、夫も在宅勤務。3度の食事作りは手間がかかり、自分の時間もない。ストレスがたまって怒ることが増えた」と訴える。

 日本アンガーマネジメント協会の公認ファシリテーター野村恵里さん=同市東区=は「怒りは自然な感情で、我慢したりなくしたりする必要はない」と言う。大切なのは怒りをうまく表現することとアドバイスする。

 子どもの行動に対してカッとしたときにすべきことは三つ。一つ目は「落ち着く」ことで、深呼吸して怒りのピークとされる6秒をやり過ごす。その際は「怒りが鎮まって笑顔の自分の姿を思い浮かべるなど、冷静になることを意識しながら数えるのがポイント」と野村さん。

 心を落ち着けたら、次にするのは「考える」こと。本当に怒るべきなのかどうか見極める。取捨選択して重要なことだけ怒ることを心がければ、無駄なイライラが減り、メリハリがついて子どもにも伝わりやすい。

 怒る必要があると選択したら、三つ目は「分かりやすく伝える」。なぜ怒っているのか、どうしてほしいのかを説明することが大切だ。

 例えば、部屋が散らかっているとき。言いがちなのは「ちゃんと片付けなさい」だが、野村さんは「『ちゃんと』『しっかり』『もっと』といった言葉はあいまいで、その度合いが人によって食い違うので伝わりにくい」と指摘する。「床のおもちゃを箱に入れて棚にしまって」など、「ちゃんと」のイメージを具体的に表現することで、片付けのゴールが共有できる。

 日常生活が制限され、ストレスがたまるのは子どもも同じ。「ルールを見直すのも一つの手段」と野村さん。いつもは1時間のゲームの時間を3時間にする代わりに、「1時間ごとに10分間、目を休める」「ゲームは勉強を済ませてから」など、子どもの要求も聞きながらお互いが納得できる条件を話し合う。

 野村さんは2014年まで20年間、保育士として勤務し、「以前は仕事と2人の息子の子育てや家事に追われ、イライラを家族にぶつけていた」と苦笑する。12年に同協会の講座を受けて資格を取得。「お母さんはこう思っている」「こうしてほしい」と丁寧に伝えることで、次第に子どもとの関係が変わっていったという。

 親子の時間が増えた今は絆を深めるチャンスでもある。怒りをうまく扱い、より良い親子関係を築きたい。

「子育ては料理と似ている。子どもとの良い関係という“ごちそう”のため、怒るべきことを見極め丁寧に伝える下ごしらえを大切に」と話す野村さん

>一覧に戻る

ログインして「コメントを書く」

Access Ranking

Present

プレゼント