/掲載日:2020年07月26日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:24ページ/
これまで地域住民に運営を委ねてきた岡山市の放課後児童クラブで、3年がかりの市直営化への移行が4月に始まった。以前は地域によって預かり時間も利用料もばらばらだったのを一律にし、どこでも同じ水準のサービスを受けられる体制を目指す。本年度は87クラブのうち22クラブが移行した。現場はどう変わったのか、現状を探った。
(平田亜沙美)
「お母さんが来たよ」「さようなら」―。直営化した箕島小の放課後児童クラブ(同市南区箕島)で午後6時半ごろ、保護者の迎えで児童が1人、また1人と帰っていく。
この時間のお迎えは去年まで見られなかった光景だ。直営化で午後6時15分の閉所が7時に繰り下がった。子どもを預ける保育士坂山友子さん(36)は「前は母に迎えを頼むこともあった。焦る必要がなくなり助かる」と話した。
おおむね好評
岡山市では町内会長や保護者らが学校単位で委員会を作り、クラブを運営してきた。人の確保などに困り、午後5、6時台に終了するクラブも少なくなかった。「少しの残業もできない」と訴える保護者の声に応えようとしたのが直営化だ。
新体制では市が運営責任を負い、現場の切り盛りを市ふれあい公社に委託。事務は公社が一括して担う。預かり時間は延長を含めて午後1時~7時、基本利用料を月7500円に統一した。7割のクラブは値上がりになったが、時間は平均30分長くなった。保護者にはおおむね好評という。
大森雅夫市長は「保護者に不便を掛けており、公が前に出て底上げを図る必要があった」と政策転換の理由を説明する。
移行に難色
直営化には人材確保の狙いもある。支援員の雇用は従来のクラブ単位から、公社で一括する形に変わった。身分の安定や待遇の改善が期待される。
ただ、パート職員も多いことから、支援員が希望する勤務形態は一律ではない。
本年度、新型コロナウイルスの影響で学校が休校し、各クラブは開所時間を延ばして子どもたちを受け入れた。その反動で、パート職員が配偶者控除の範囲を超えないように出勤を減らす動きが出ている。
公社はパート、アルバイトを計約50人採用し、人手の足りないクラブに送り込んで対応している。「小規模クラブでは人を募集してもなかなか反応がない。公社で一括募集すれば人材確保しやすい」と意義を強調する。
今後の課題の残る65クラブの移行にも勤務形態は関わってくる。市は22年度までの完全移行を目指すが、大規模クラブを中心に10カ所が拒否する考えだ。こちらではベテランら正規職員の待遇が大きな問題という。
大きなクラブでは8時間勤務が多い。一方で、直営クラブは6時間勤務が基本。収入が減れば生活が成り立たない。退職者が相次ぐのではないかとの懸念がある。平福小(同市南区平福)のクラブは「ベテランが辞めると現場がもたない」と直営化しない方針だ。
市は「地域での運営の担い手は高齢化などで減っており、クラブを持続させるために直営化は欠かせない。事務の負担が減り、子どもと向き合う時間も増えるなどメリットを丁寧に訴えたい」としている。