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社説 コロナ禍と女性 実態分析し支援強化せよ

/掲載日:2020年11月12日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:2ページ/

 新型コロナウイルスの感染拡大が特に女性の生活や雇用に深刻な影響を与えている。こうした事態を政府も重視し、内閣府に有識者研究会を設け、実態調査を始めた。背景を詳細に分析し、実態に即した支援の強化を急がなければならない。

 外出制限などでドメスティックバイオレンス(DV)が増加したり、育児や介護に携わる女性が解雇の対象になったりすることが世界的に懸念され、国連は4月に各国に女性支援策を強化するよう求めた。日本国内でも懸念は現実のものとなり、コロナ禍の影響は統計に表れつつある。

 警察庁によると、国内の自殺者数は2019年まで10年連続で減少し、今年も6月までは前年同月より減少していたが、7月から増加に転じた。男女ともに増えているが、特に増加率が大きいのが女性だ。9月は男性が前年同月比0・4%増だったのに対し、女性は同27・5%増だった。

 背景には雇用環境の悪化もあるとみられる。非正規労働者を対象とした解雇や雇い止めが相次いでおり、非正規が多い女性の就業者数が減少している。感染拡大で打撃を受けた宿泊・飲食サービス業に非正規で働く女性が多いことなどが背景にあるようだ。

 在宅時間が増え、ストレスなどからDVや性暴力の増加が懸念されていたが、実際に相談件数は増えている。全国の配偶者暴力相談支援センターなどが5~6月に受けたDVの相談件数は前年同月に比べ1・6倍に上った。性暴力に関する全国のワンストップ支援センターが受けた相談件数も、4~9月に前年同期比15・5%増となっている。

 内閣府に設置された「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」には雇用や医療などの専門家が参加し、対策を議論している。並行してコロナ下での個人の生活や意識の変化についてインターネット調査を行い、単身、子どもの有無、ひとり親といった世帯類型ごとに分析を進める。世帯主の口座に一括して振り込まれた特別定額給付金が、女性に渡ったかどうかなども調べるという。

 研究会は性別に着目して政策課題を整理し、今後の政府の新型コロナ対策や、策定中の今後5年間の「男女共同参画基本計画」に反映させる予定だ。全国の感染者数は再び増加傾向で、女性を取り巻く状況は一層悪化する恐れもある。できることから施策に反映させるスピードも求められよう。研究会では特にシングルマザーが追い詰められているとの指摘もあり、対策は急務といえる。

 DVや性暴力の被害者が相談しやすいよう、内閣府は10月から4桁の全国共通短縮ダイヤルを開設している。DV被害は「#8008」、性被害は「#8891」で、最寄りの支援センターにつながる。迅速な支援につなげるため、まずはこうした相談電話の周知も図りたい。

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