/掲載日:2020年11月13日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:15ページ/
スマートフォンでインターネット上のニュースを見ていると、「おすすめ」の記事が表示されます。利用者の閲覧履歴から興味や属性を推測して自動的に配信されるため、自分好みの情報を入手しやすくなる仕組みです。
便利な機能なのですが、半面では情報収集の対象が偏り、幅広い視点を失う危うさもあります。特に会員制交流サイト(SNS)では「エコーチェンバー現象」という問題が指摘されています。
本来のエコーチェンバーは、残響が長くなるように壁面などが工夫された部屋のこと。SNSでのエコーチェンバー現象は、閉ざされた室内で反響音を聞き続けるかのごとく、自分と同調する人と閉鎖的な交流を繰り返すうちに、その考えだけが「正しい」と思い込むことを意味します。
例えば災害が起きたとき、SNSではデマ情報が拡散されがちです。客観的には怪しくても、デマを肯定する意見ばかりに接すると、いかにも真実だと思えてくる。否定や反論は「隠蔽いんぺい工作」のように捉えられ、「本当のことが隠されているのだから、やはり自分たちの方が正しいんだ」と思考が強化されるのです。
知識や社会経験が未熟な子どもたちは、仲間同士のクチコミに影響されやすい。信憑性しんぴょうせいを疑えず、「うわさ話」の閲覧や検索を続けることも多いでしょう。すると関連情報がより集まり、ますます考えが偏っていくことにもなりかねません。
こうして自分の見たいものしか見えなくなったり、自分と同調する人としか関わらなくなったりする。情報化社会にはそんな危険性も潜んでいます。 (石川結貴・ジャーナリスト)