/掲載日:2020年12月25日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:14ページ/
「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」で2回連続トップ10入りした「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」のシリーズで知られ、子どもたちに大人気の児童文学作家、広嶋玲子さんが新シリーズを刊行した。タイトルは「猫町ふしぎ事件簿」(童心社)。自身が大好きだという「猫」と「ファンタジー」を融合させた物語だ。
広嶋玲子さん。執筆時に想定する読者は子どもの頃の自分だという。「昔の私が読んで、夢中にならないと思ったら書き直しです」
ファンタジーの魅力について、広嶋さんは「自分の知らない世界と出合うことで、現実に縛られない発想力や想像力が生まれる」と語る。猫は「思い通りにならないけど甘え上手。ミステリアスかと思えば、とぼけていて」。捉えどころのなさが魅力だという。
「猫町ふしぎ事件簿 猫神さまはお怒りです」
新シリーズ第1巻の「猫神さまはお怒りです」は、猫と話せる小学4年の男の子・遠矢が主人公。猫から掛けられた呪いを解くために「三つのおくりもの」を手に入れようと奮闘する。
買った缶詰を「おくりもの」にしようとした遠矢にある猫が、猫の世界では自分で手に入れたものだけに価値があると諭す場面がある。広嶋さんは「お金で簡単に手に入るものは大したことがないのでは。友達へのプレゼントに高いものを買えば、それが喜ばれるのか。そんなことを考えるきっかけになればうれしい」と語る。遠矢は猫を通じて新たな視点と価値観に触れ、成長していく。
自身も子どものころから本が好きだった。「学校が嫌いで、本の世界に入り込んで楽しんでいた。楽しめるもの、楽しめる世界が別にあるというのが救いだった」と明かす。読むことで救われる。「自分の本も誰かにとってそうだったらいいな」