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がん教育 岡山4割止まり 18年度小中高全国平均下回る 精神的ショックへ配慮課題

/掲載日:2021年01月29日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:15ページ/  


 がん対策推進基本計画が提唱している学校でのがん教育について、岡山県内で2018年度に実施した小中高校は全体の4割程度にとどまり、全国平均(61.9%)に及ばなかったことが文部科学省の調査で分かった。特に小学校は3割弱と全国平均を20ポイント以上も下回っていた。一方で扱い方によっては子どもたちに誤解や不安を与えかねないデリケートな問題でもあり、実施する上で児童生徒への精神的なショックに対する配慮といった課題も見つかっている。

 調査によると、県内で実施したのは小学校29.8%、中学校64.6%、高校58.1%だった。17年度より2.0~8.7ポイント増加しているものの、それぞれ全国平均を下回った。実施できない理由では、全国的に「時間が確保できない」「がん以外の健康教育を優先した」などの声が挙がった。

就実小学校で行われたがん教育の授業


 実施校でも課題が浮き彫りになっている。家族をがんで失ったり、闘病中だったりする児童生徒への配慮だ。子どもや家族の状況を把握する必要があり、実施の可否を決めるため、準備段階で苦労するケースもあるそうだ。

 がんへの正しい理解を深めるために文科省は、がん経験者や医師ら外部講師による授業を取り入れるよう勧める。県教委などは対応可能な医療関係者62人と経験者ら15人の計77人をリストアップした。全国がん患者団体連合会も講師養成を推進する。ただ、県内で活用した学校は3.9%(18年度)にとどまる。ビデオ会議システムでの授業など新しい形も見え始め、活用が期待される。



がん教育の実施状況(グラフ)


 21年度からは新しい学習指導要領に基づき、中学校で全面的に実施される予定だ。

 自身も講師を務め、がん教育に詳しい岡山大病院血液・腫瘍内科の西森久和助教は「子どもたちのリスクケアを十分に行い、学校の実情に合わせて授業を行うことが重要だ。医師やがん経験者が加わることで、がんに対する誤解や偏見をなくし、『いのち』と向き合う良い機会となれば」と話している。
(斎藤章一朗)

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