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野崎教育賞の2小学教諭 現場の変化 工夫し対応 人権教育・生徒指導 岡山市立清輝小 村上貴浩教諭(36) つながり築き課題解決/プログラミング教育の実践 井原市立出部小 平本友美教諭(39) 論理的思考力育てたい

/掲載日:2021年02月26日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:21ページ/  


 

 小中学生1人に1台のパソコン・タブレット端末を配備する国の「GIGAスクール構想」や小学校からの英語教育など授業内容の変化に加え、不登校や問題行動への丁寧な対応と、学校に求められるものは増えているようだ。現場の先生たちは、どう工夫しながら対応しているのだろう。岡山県内の若手教職員を表彰する野崎教育賞を今月受賞した小学校教諭2人の活動を通して、その一端を紹介する。(岩崎充宏)

人権教育・生徒指導 岡山市立清輝小 村上貴浩教諭(36) つながり築き課題解決

 「先生さよならっ」「さよなら。今日は頑張っとったな」。午後4時前。校舎の前で、下校する児童たちをマスク越しの笑顔で見送る。自然なあいさつの光景の中で、その視線は一人一人の表情にそっと配られていた。「登下校時に、いつもより元気がないな、家や学校で何かあったかなと感じる時があるので」と教えてくれた。「そんなときはまず声を掛けるんです。『どうしたん?』って」

 岡山市街地にある市立清輝小(岡山市北区新道、児童数120人)。村上教諭は2019年度から生徒指導主事として、児童の生活全般や不登校、問題行動を含めたさまざまな課題解決に取り組んでいる。

 心掛けることの一つは「つながり」だ。「この先生には何でも話せる、という関係になっておきたい」と、たわいもない話も含めて普段から児童と関わる。話せる相手はもちろん他の先生でもいい。職員室での会話や会議に加え、気付いたことを折に触れて文章にして配るなどで他の教職員とつながっているからだ。今年はコロナ禍の影響も受けるが、保護者とも参観日での声掛けなどを通してつながりをつくってきた。

 そうして児童の変化にいち早く気付き、他の教職員や家庭とも連携して対応する。進学後もスムーズにゆくように中学とのつながりも築いてきた。同小の余公俊晴校長は「子どもの変化に気付く『肌感覚』が優れていて、対応も早くて適切」とし「経験を後輩につなげてほしい」と期待する。

 ここにくるまでは「子どもと関わっていて悩むことばかりだった」と打ち明ける。先輩教員のやり方に学び、外部の研究会や本を通して知識や実践力を磨く努力を続けてきた。取り組むことは多様だが、目指すところはシンプルだ。「その子のために何がベストか。子どもの身近にいて、困ったことがあれば一緒に考えられる先生でありたい」


プログラミング教育の実践 井原市立出部小 平本友美教諭(39) 論理的思考力育てたい

 井原市立出部小(同市上出部町、369人)の1年い組を担任する平本教諭は19日、5時間目の始まりにこう呼び掛けた。「今日は“ピラーくん”に栄養満点のごはんをあげよう」

 ピラーくん(正式名Codeコード―Aエー―pillarピラー)は、愛らしいイモムシ形のプログラミング教育用機器。「まっすぐ」「みぎ」「ひだり」などの進み方がインプットされた部品をつないで組み立てる。スイッチを押すと、つないだ順に動きが実行される仕組みだ。

 生活科で学んだ栄養バランスの良い食事(牛乳とご飯、果物など)を復習した後、その絵を置いたゴールまでスタート地点からピラーくんを進ませる。ポイントは、真ん中の障害(カマキリ)を避けるため、進み方の組み合わせを考えること。「『まっすぐ』を2回続けてから『みぎ』じゃない?」。カマキリに捕まった児童たちは班で相談しながら試行錯誤。何度も挑戦してゴールした姿に、平本教諭は目を細めていた。

 本年度から全面実施された小学校のプログラミング教育。ただ独立した授業時間はなく、算数などの時間に取り入れて活用し、プログラミングに必要な「論理的思考力を身に付ける」ことを目指す。工夫の余地が大きく、平本教諭は体育などでも楽しみながら学べる授業を考案している。

 意外にも「情報機器の扱いは苦手」というが、数年前の中堅教員研修でプログラミング教育の面白さに気付いた。県総合教育センターの指導も積極的に受けて実践を重ねる姿に、同小の森川孝一校長は「取り組みがとにかく前向き。公開授業にも積極的だ」と、苦手意識のある教員も含めた周囲への好影響も指摘する。

 「変化が激しい時代。今の子どもたちが大きくなった頃は違った社会になっていると思う」と平本教諭。「小学1年生から積み重ねて身に付けていけば、きっと将来の役に立つはず」。そう思いを込めている。

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