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就学援助制度知って 動画やチラシ 自治体、周知に工夫 コロナ禍 高まる活用機運

/掲載日:2021年04月09日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:15ページ/  


 家計が苦しい小中学生の保護者に、自治体が学用品代などを補助する就学援助制度。新型コロナウイルス禍で家計が急変した世帯も多い中、少しでも利用しやすいよう、周知に工夫を凝らす自治体が増えつつある。

 「就学援助制度ってなに?」。分かりやすい見出しと、柔らかなタッチのイラスト。北海道釧路町が作った1枚のチラシが好評だ。昨年夏、制度を周知するため小中学生のいる全世帯に配った。「コロナ禍で突然、経済的に厳しくなった保護者など、幅広い人に手に取ってほしかった」と担当者。
                           情報の量を絞りデザイン性を高めたという。

 全国で就学援助の対象となっているのは、小中学生のほぼ7人に1人(2018年度)。ただ利用の条件を満たしているのに、制度を知らず申請しない保護者も多い。周りの目を気にして利用をためらう人もいて、情報の届け方が課題だ。

 非政府組織「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」は18年から、制度への要望や認知度などを主に子育て世帯にアンケート。周知の方法や姿勢には自治体間で差があり、分かりやすさを求める声も目立ったという。田代光恵プログラム・マネージャーは「文字ばかりの説明文書だけでなく、内容の工夫や媒体の多様化など改善の余地は大きい」と指摘する。

 制度の意義が高まる中、釧路町のような取り組みは広がりつつある。札幌市は1月から、かわいいキャラクターが制度を紹介する動画をサイトにアップ。平易な文章で利用を呼び掛けるのは堺市で「主に外国籍の人向けに5年前から易しい日本語で案内しているが、最近は幅広い層への周知に役立っている」という。

 こうした変化を学校現場は、どう受け止めているのか。各地の学校事務関係者でつくる「全国学校事務職員制度研究会」の植松直人常任委員は、こう話す。「必要とする人に何とかつなげようとする新たな動き。コロナ禍の中で制度活用の機運が高まっている」。各地の事務職員の間では、手づくりチラシの配布など試行錯誤も重ねている。

 その潮流を加速させたのは、沖縄県が17年から放送していたテレビCMだという。軽快なBGMなど親しみやすい内容で制度をPR。コンビニのレジ画面でも似た内容を流した。沖縄大の山野良一教授(児童福祉学)は「CMのインパクトは大きかった。制度のイメージを変えつつある」と指摘。同県の15年と18年の調査では、困窮しながら制度を知らずに利用しない人は減る傾向で、利用率は上がっている。

 周知の機運について山野教授は「就学援助を特別視せず、必要なら活用できる一般的なサービスとして、捉え始めているのではないか」と話す。


ズーム

 就学援助制度 市区町村が、経済的に厳しい小中学生の保護者を支援する制度。対象は生活保護世帯や、生活保護世帯に近い状態だと認められた世帯。給食や通学の費用の他、修学旅行費やPTA会費などが支払われる。補助額の目安は、学用品費なら年間で小学生は約1万2000円、中学生は約2万3000円。

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