「母乳で育てるのが一番いいに決まってる」
「母乳が出ないのは母親失格かも…」
「完母が“正解”だよね?」
赤ちゃんを育てる上で、多くのママたちがぶつかるのが“母乳神話”。
たしかに母乳には素晴らしい栄養素や免疫成分が含まれており、赤ちゃんにとって理想的な食事とも言われます。
でもときに、「母乳じゃなきゃダメ」という思い込みがママ自身や赤ちゃんの健康を危うくしてしまうことも。
今回は“栄養面”から見た「完母の落とし穴」に焦点を当て、母乳とミルクの正しい知識をシェアしていきますね!
実はWHO(世界保健機関)も「母乳は推奨するけど無理のない範囲で」としています。
「ママの心と体の健康が最優先」-それが大前提なんです。
母乳には、赤ちゃんの発達に必要な脂質やたんぱく質、乳糖、そして抗体など免疫力を高める成分がたっぷり含まれています。
とくに初乳(産後すぐの母乳)は、赤ちゃんにとって“天然のワクチン”とも言われるほど。
一方、現代の粉ミルクも非常に研究が進んでいて、母乳に近づけた栄養バランスになっています。
ビタミンD、鉄分、カルシウムなどはむしろミルクのほうがしっかり含まれているケースも。
ここで一つ大事なポイント。
母乳の栄養価はママの栄養状態に大きく影響されるんです!
妊娠・出産で消耗した体のまま授乳が始まる…。
完母で育てようとすると、一日あたり約500〜800kcalものエネルギーが必要になると言われています。
さらにカルシウム、鉄分、ビタミンB群などが赤ちゃんに必要な母乳にも送られてしまうため、ママの体はどんどん栄養不足に。
結果どうなるかというと…
「自分が我慢すればいい」と思って頑張りすぎることでママの健康が後回しになってしまう。
これこそが完母の“まさかの落とし穴”なんです。
親子で心地良く過ごしていくためには、ママ自身の気持ちの余裕や体力も大切。
特に産後は赤身肉(牛肉、豚肉)や小魚(イワシ、シラスなど)を積極的に食べ、産後の栄養を補っていきましょう!
母乳育児がうまくいっていないのに無理に完母にこだわってしまうと、赤ちゃんにとっても栄養不足になるリスクがあります。
とくに注意したいのが「ビタミンD」。
母乳中のビタミンDはとても少なく、ママが日光を十分に浴びていたりサプリメントなどで補っていないと、赤ちゃんが「くる病(骨の形成異常)」になることも。
またママの食生活が乱れていたり体力が限界に近い状態だと、母乳の質自体にも影響が出てしまいます。
ミルクを足すことに罪悪感を覚えるママも多いかもしれませんが、それは全く不要です!!
私自身3児を育ててきましたが、むしろ栄養バランスをしっかり整えられるミルクは赤ちゃんの健康を守るための強力なサポートアイテムです!
例えば、
こんな場合、ミルクで栄養を補助してあげる方が良い場合も多々あります。
そして何より大事なのは「ママの心と体が元気であること」。
それは立派な“愛情ある育児”の形なんです。
私のところにも「母乳育児がつらい」と涙ながらに相談に来るママがいます。
中には頑張りすぎて産後うつになりかけてしまった方も。
母乳でもミルクでも混合でも、赤ちゃんが笑顔で元気に育ってママが笑っていられるならそれが一番の“正解”。
完母にこだわることが、ママの体と心の健康を脅かし赤ちゃんの栄養不足につながることもある。
だからこそ「ミルク=負け」なんて思わなくて大丈夫。
ママはもうじゅうぶん頑張っています。
愛の形に正解も不正解もありません。
もっと自分に優しく、柔軟に。
短い子育て期間を全力で楽しめるよう、赤ちゃんだけでなくママ自身の栄養も整えていきましょうね。
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森田早紀(もりた・さき、管理栄養士)
岡山市出身。大阪で対プロ野球選手やスポーツチーム、調剤薬局、歯科医院などでの栄養指導経験を経て妊娠、出産。
長男の10カ月にも及ぶ夜泣きから「分子整合栄養医学」と出合い、子どもはもちろん自身や家族の不調を改善。
“ママと子どものかかりつけ管理栄養士”として講座や個別セッションを実施。
次の世代に残したい食文化や食習慣を、管理栄養士ならではの視点で伝えている。
「食べ物で、大切な家族の心と体を豊かに…」-そして一人でも多くのママが自分らしく、楽しく子育てができる事を願って活動中。
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