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[歯科医師ママの健康教室] 噛む力は「一生の宝物」唾液のむし歯予防パワー(3〜12歳)

【はじめに】

「早く食べちゃいなさい!」

忙しい朝や夕食時、ついお子さんに言ってしまっていませんか?

今回歯科医師としてお伝えしたいのは、「よく噛むこと」は、将来のむし歯予防してくれるということです。

お口の機能を育てる「口育(こういく)」の第一歩。そのメカニズムを一緒に見ていきましょう。

 

【砂糖水vsサトウキビ むし歯になりやすいのはどっち?】

歯科医学の世界には、ステファンカーブという「食べ物を食べた後、お口の中が『歯が溶ける酸性』になり、そこから『唾液の力で元の健康な状態』に戻るまでの時間経過を表したグラフ」があります。

これに基づいた興味深い比較をご紹介します。

同じ糖分でも、液体で摂るのと固形で摂るのでは、お口へのダメージが全く違います。

  • 砂糖水(液体): 飲むとお口の隅々まで糖分が行き渡り、一気に「歯が溶け始める数値(pH5.5以下)」まで酸性度が下がります液体は唾液で薄まりにくく、お口の中が酸性のまま放置されがちです。
  • サトウキビ(固形): 糖分は高いですが、繊維を噛みちぎる動作が必要です。この噛む刺激が脳に伝わり、大量の唾液を呼び出します。その結果、糖分があっても酸性度が唾液で中和され、元の安全な状態に戻っていくのです。

 

【鍵を握るのは、噛むことで出る「唾液(だえき)」のチカラ】

しっかり噛むことで分泌される唾液は、いわば「お口専用の万能な修復液」です。

唾液には、私たちの想像を超える3つの強力なパワーが備わっています。

  1. 中和する(緩衝能):食後、お口の中は細菌の出す酸によって「酸性」に傾き、歯の表面が溶け始めます。唾液はこの酸を素早く中和し、歯が溶ける時間を最小限に食い止めます。
  2. 修復する(再石灰化):唾液に含まれるカルシウムやリンが、酸で溶けかかった歯のエナメル質に再び取り込まれ、歯を元通りに修復します。
  3. お掃除(自浄作用):噛むことでお口が動くと、唾液が勢いよく流れ、食べかすやむし歯の原因菌を洗い流します。しっかり噛む人ほど、お口の中が清潔に保たれやすいのです。

噛まずに飲み込めるゼリー飲料や柔らかいお菓子は、この「最強のガードマン」を呼び出す暇を与えてくれません。

 

【「何を」食べるかより「どう」食べるか】

現代の食事は柔らかく、噛む回数が昔に比べて激減していると言われています。

大切なのは「硬いものを無理に噛む」ことではなく、「お口を正しく使って食べる」ことです。

  • 前歯で「かじり取る」大きな食べ物を前歯でかじり取る動作は、自分の適量を学習するだけでなく、顎の正常な発育を促し、歯並びの土台を作ります。
  • 奥歯で「すり潰す」舌を上手に使いながら、食べ物を奥歯に乗せて何度もすり潰します。この時、頬の筋肉や舌が連動することで、お口の周りの筋肉が鍛えられます。

 

【今日からできる!カミカミ大作戦】

  • 野菜は大きめにカットひと口で入らないサイズにすることで、自然と「かじり取り」が発生します。
  • 飲み物で流し込まない食事中に水分を摂りすぎると、噛まずに飲み込む癖がついてしまいます。水分は食後に摂るのが理想です。
  • カミカミ食材のプラス食物繊維(ごぼう・れんこん)、弾力(タコ・こんにゃく)、低水分(干し芋・煮干し)を献立に一品添えてみましょう。

 

【プロの目で「機能」のチェックを】

お家での工夫は素晴らしい取り組みですが、お子さんのお口の状態は千差万別です。

「噛み合わせのバランス」「舌の癖」があると、せっかく噛んでいても効率が悪かったり、逆に特定の歯に負担がかかったりすることも。

ぜひ、かかりつけの歯科医院で定期的なメンテナンスを受けてください。

私たちが診るのは、むし歯の有無だけではありません。

「お口が正しく育っているか」「咀嚼する・飲み込む・話す・呼吸」といったお口の機能発達をチェックしています。

このお口の機能発達は、お子さんへの一生ものの健康のプレゼントになります。

 

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横道由記子

子どもの頃にむし歯だけでなく、歯並びに悩んで矯正治療を受けた経験から、予防歯科という言葉にひかれ、地元岡山大学の歯学部で学び、平成25年に和気歯科医院院長となる。

むし歯の予防だけでなく、噛み合わせにおいても、原因を見つけ治療とあわせて予防していく考え方を学び、我が子の子育てで悩み、学んだことをいかして、医院では小児歯科・小児矯正歯科を担当している。

地域の保育園、幼稚園、公民館など子育て支援事業や企業主催の健康教室などで健康なお口と心身を育むサポートを積極的に行っている。

 

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