第4回より、子どものコミュニケーション能力を高めるお話として他者に対する【信頼感】と【安心感】を育むために『私たち親が自分自身を振り返るポイント』をテーマにお伝えしています。
前回は、「コミュニケーションがうまくいかずモヤモヤした気持ちになっているとき、あなたは無意識に【被害者意識】になっていませんか??」という内容をお伝えしました。
親なら誰しも、
「お友だちとうまくやれているか?」
「仲間外れにされたりしてないかな?」
「ちゃんと自分の意見が言えるか?」
と我が子の人間関係や学校生活について心配になることと思います。
私は、子どものコミュニケーション能力の基礎は親子のコミュニケーションで培われると考えています(第3回参照)。
子どもが社会に出たとき、人間関係やコミュニケーションに抵抗や苦手意識をなるべく持たず、人と心地良い関係性を築いてほしい-。
そのためには、親子の関係性を見つめ、私たち親が子どもにどう関わっているかを振り返ることはとても大切なことです。
対人関係において、あなたはどのような「〜でなければならない」「〜すべき」という価値観を持っていますか?
人の行動の裏には、無自覚でも必ずこれらの考え(価値観)が存在しています。
軸となっているのは、社会で生きていく上でのルールやマナー、常識、学校で学んだこと、親から教えられたことなど。
主観的なものが多く、中でも、
というような親の価値観はその人個人に強く影響します。
そしてこの価値観に反することに対しては、嫌悪感や許せない気持ちが出てきます。
例えば子どものころ、成績が悪く親によく怒られて大きくなったなら、
「成績がよくなければ評価されない」
「できがよくなければ認められない」
「人より優れていなければならない」
「人に負けてはならない」
「バカにされたくないから人の上に立たなければならない」
という価値観を持つかもしれません。
あるいは、自分の話を聞いてもらえず泣いてしまうなど親に怒られた環境で育ったのなら、
「自分の気持ちを言うのはわがままなこと」
「ありのままの自分では嫌われてしまう」
「人に合わせなければならない」
「言いたいことを言うべきではない」
「弱みを見せてはならない」
などの価値観を持つようになるかもしれません。
親である私たちが「成績がよくなければ評価されない」「人より優れていなければならない」というような価値観を強く持っていると、勉強やスポーツなどに対しても子どもが楽しんで取り組むという感受性を伸ばす視点より、「優劣」「勝ち負け」「できの良し悪し」という能力優先の価値観で子どもを評価するようになります。
このような環境で育った子は、人と対等な関係を築くことが難しく、繋がりから得られる居心地の良さや安心感を理解できません。
それだけでなく、対等な関係に居心地の悪さを感じてしまうので、自分が常に上の立場でいられるよう“マウントを取る”ようになるかもしれません。
このような関係では、結果的に自ら「孤独」な状況を招いてしまいます。
これは子どもに問題があるのではなく、本当は親の中に「人より劣ることへの怖れ」「負けることへの劣等感」などが存在していて、それらの不安を打ち消すかのように、「人から評価される人間」であるよう子どもへ価値観を押し付けていたということです。
また先の例のように「自分の気持ちを言うのはわがまま」などの価値観を強く持っているケースだと、その子なりの人との付き合い方を無視し、もっと積極的に友だちと仲良くするよう口を出しすぎてしまうかもしれません。
あるいはもし子どもが一人でいたとしたら、「仲間に入れてもらえていないんじゃないか/仲間外れにされているんじゃないか」という不安が根っこにある価値観のフィルターで子どもを見ているので、冷静でいられなくなってしまうかもしれません。
子どもからすればただ一人の時間が必要なのかもしれないのに、親自身が被害者であるような錯覚に陥ってしまうのです。
結果、子どもに不安を押し付けて親子の境界線が曖昧になってしまい、冷静な見方や判断もできなくなってしまいます。
どちらの例も、本当は人とのコミュニケーションの場面において親自身が「人に嫌われること」「ひとりぼっち」「孤独になること」を怖れているからこそ、自分の存在価値を証明しようと「〜でなければならない」「〜すべき」という価値観を握りしめているのです。
親が自分の怖れや不安を回避する生き方をしていたら、子どもを冷静にみることができません。
そのため「親の不安の押し付けなのか?」「本当に子どもが困っているのか?」が分からなくなり、子どもが必要としている適切なサポートをしてあげることができないのです。
「〜でなければならない」「〜すべき」という価値観は、社会で人と調和し協調性を保って生活していくため必要不可欠なものです。
しかしあまりに強く囚われすぎると、このように自分自身や他者を縛る枠にもなってしまいます。
「〜しなければならない」「〜すべき」という考えとは裏腹に「〜できなかった」とき、自分自身や他者に対して批判的な気持ちが湧き上がってきた経験は誰もがしていることでしょう。
「〜できなかった自分が悪い」と自分を責め、「〜できなかったお前はダメなやつだ」と他者を非難してしまうかもしれません。
いずれにせよ「〜しなければならない」「〜すべき」という価値観は、行き過ぎると自分自身や他者を非難・批判・攻撃するということになります。
そして自分自身や子どもの自由な意思や選択を妨げるものとなってしまいます。
親からしてみれば「躾」だと認識していますが、子どもからすれば何をしても親から批判・非難され攻撃されていると感じてしまうので、親子のコミュニケーションがより一層拗れていってしまいます。
もし普段子どもとのコミュニケーションの場面で「感情的になっている」と感じているなら、自分が対人関係においてどのような価値観を持っているかを探ってみましょう。
自らの行動を変えるためには、まずその根っことなっている価値観に気付くことがとても大切です。
「〜しない子どもが悪い」という見方ではなく、普段自分がどんな価値観を持って子どもを評価しているのかを意識して考えてみましょう。
普段子どもさんと接していて感情的になる場面をイメージして…
それらから読み解いて、あなたはどんな価値観を持っていると思いますか?
そして最後に、あなたは普段から「人から愛されるために/嫌われないために」どんな行動をしていますか??
思いつくものを紙に書き出してみてください。
「正解/不正解」も「正しい/間違い」もありませんし人に見せることもないので、安心して書き出してみてください。
書き出してみると、思いもよらない価値観が見つかるかもしれません。
自分自身の行動パターンを客観的に知り、どんな価値観のフィルターを通して子どもと接しているのか理解すると、感情ベースだった行動に冷静さを取り戻すことができます。
自分の行動や価値観を理解できると、子どもの行動や価値観も自然と尊重してあげられるようになります。
そうすると心に余裕が生まれてきて、子どものことを尊重し思いやることのできるコミュニケーションに変わっていくでしょう。
今回も読んでくださり、ありがとうございました。
みなさまが心穏やかに過ごすことができますように。
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平野桂子(ひらの・けいこ)
岡山市在住。3人(高3、中3、小1)の子どもを育てるママ。自身の子育てと介護職に20年間従事した経験から親子関係の大切さに気づく。子育てに悩んだ経験から、同じように子育てで悩むお母さんの力になるべく、現在は心理セラピストとして子育て相談やインナーチャイルド療法、前世療法などに取り組み、より良い親子関係のためのコミュニケーション講座を開催している。2024年春、子どもさんとお母さんの心が楽に、ありのままの笑顔でいられる場所『みんなの家』をオープン。親子で自然と触れ合う参加型の活動を行っている。
心理セラピスト(子育てでの気付きやヒントなど書いています)
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