/掲載日:2020年05月15日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:15ページ/
私も妻も、「読み書きそろばん」だけできていればいいという考え方。島のそろばん教室にだけ行かせました。3人の子どもに「勉強しろ」と言ったことは一回もありません。
それでも姉二人は、それなりに勉強していたようです。大悟は本当にしなかった。「勉強しないでいい」という親の教えを、一番忠実に守ったのは大悟です。
でも、それでよかったと思っています。勉強しろと言わなかったのは、私は勉強より、もっと大切なことがあると思っていたから。大悟は、大切なことを備えている様子を、ちょくちょく見せてくれていました。
そろばん教室で、誰かがおならをしたらしいんです。女の子だったようなんですが、すぐに大悟が「わしが屁への罪くらいかぶるで」と言って笑いに変えて、自分に注意を引きつけたそうです。靴下に穴が空いているのを見つかったら、「春じゃから、芽が出てきとるんよ」とか、機転の利いた返しをしたりね。
高校の時、野球部の試合を一度だけ見に行ったことがあるんです。倉敷市営球場でした。大悟が打席に立つと、ものすごく盛り上がるんです。同級生らがフェンスまで駆け寄って、手をたたきながら大悟コールをしてくれて。その姿を見て、「銭では買えないものを手に入れている」と感動しました。
社会に出て大切なのは、勉強ができるかどうかではなくて、人の気持ちが分かって、心が通じ合える関係をつくれるかどうかだと思います。親がどうこう言ったことはありませんが、北木島や学校での生活の中で、大悟は生きていくのに必要な力を自然に身につけてくれていたんでしょう。
外では社交性を発揮する大悟ですけど、母親の私にも、父親にもぶっきらぼうです。テレビの番組やコマーシャルの出演が増えても、私たちに何の連絡もありません。
じゃあ、冷たいかというと、そうではない。10年ほど前に私の頭に腫瘍ができて、手術することになったんです。そしたら大悟が有名な脳外科の先生を調べて、教えてくれました。台風の時には「早く避難せえよ」と必ずメールが来ます。見かけやしゃべり方とは違って、芯は優しいんですよ。親だから見方が甘いのかもしれませんが。 (聞き手・土井一義)
高校時代にノブさん(右)と一緒に写真に収まる大悟さん
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