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コロナで不安抱える大学生活 専門家が助言 誰かとつながり助け合う 一人で悩まず相談を

/掲載日:2020年06月12日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:12ページ/

大学構内への立ち入りが制限され、オンライン講義が行われるなど、新型コロナウイルスの感染拡大はキャンパスライフを一変させた。新入生や就職を控えた4年生など、多くの学生が不安を抱えている。先を見通しにくい日々を乗り切るヒントをカウンセリングの専門家らに聞いた。

 講義や研究の遅れ、就職活動への影響、アルバイト先の休業による収入減…。全国大学生協連のアンケートでは「毎日不安で怖くて仕方がない」「入学して後悔している」といった悲観的な声も寄せられている。

 全国の大学のカウンセラーや研究者が所属する日本学生相談学会の理事長で、甲南大学生相談室の高石恭子教授は「孤立が一番恐ろしい。『相手に迷惑を掛けるかも』『この程度で相談してもいいのか』などと遠慮せず、電話やメール、SNS(会員制交流サイト)でも、つながりを求めてほしい」と話す。



 不安を言葉にするだけでも、現状から踏み出す一歩になる。東京大学生相談所の高野明准教授も「いろいろな人の力をうまく借りるのも大事な能力。心配事があれば、大学の窓口を頼ってみて」と呼び掛ける。

 特に経済的な問題について、リスクマネジメント学が専門の放送大の奈良由美子教授は「一人で抱え込まないのが原則。相談すれば、いろいろな選択肢があると分かる」と断言する。

 3人は、異例ずくめの状況を逆手に取り、「普段はできない何か」に目を向けるよう勧める。読書や映画、音楽観賞でも、夢中になれるものがあれば、時間の過ごし方が変わるかもしれない。

 加えて、自分なりのリラックス法が見つかれば、ストレスに対処しやすくなる。例えば、ぬるめの風呂にゆっくり入ったり、好きな香りを探したり。高石さんは「まずは、その日その日を丁寧に過ごしてみて。自分でコントロールできる日課があると、心の安定につながる」と指摘。他者と関わり、「ありがとう」と喜ばれるようなことをするのもお勧めだという。

 外出自粛が長期化し、重要性が増すのが生活のリズムだ。睡眠と食事の時間を不規則にせず、3食をきちんと食べ、リズムを一定に保ちたい。

 緊急事態宣言の解除で、徐々に制限が緩和されるが、奈良さんは「気を緩めず、手洗いや『3密』を避けるなど対策を続けながら、地域の状況を見て段階的に通常の生活に戻るように心掛けてほしい」と訴える。

 大学での学びや課外活動の在り方などについて、キャンパスで対面の講義や演習が再開しても、大学側も学生も模索が続く。高野さんは「新しい生活様式に応じて、『新しい学生生活』をつくっていくしかない。今の時期に身に付けたことは将来、必ず役に立つ」と話している。

健康に注意、情報は見極める


 緊急事態宣言が解除され、新しい生活様式への移行が進む。大学生が注意するべきポイントとして、放送大の奈良由美子教授は「今後また、感染の波が来ると予想される。第一は、病気にならず、けがをしないようにすること」と話す。

 次に心配なのが、メールや会員制交流サイト(SNS)などにあふれる真偽不明のうわさなどに振り回されてしまうこと。「社会が不安定な時は、情報過多になる。適切で適量、最新の情報を得るアンテナを張っておくのが重要になる」

 誰が何のために発信した情報かを意識するよう助言。「情報を見極められれば、判断を誤らずに済む。差別や偏見、社会的分断にも気を付けてほしい」

 豪雨のシーズンを控え、自然災害への備えも忘れずに。「マスクや食料品などの備蓄をしっかりして。下宿生の場合は、避難先に友人宅などを頼んでおくといい」と提案している。

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