/掲載日:2020年09月04日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:12ページ/
各界で活躍している岡山ゆかりの人たちの子ども時代を親に振り返ってもらう「子育てのメモリー」。今回は、“変顔”の自画像で美術界に旋風を巻き起こし、国際的に活躍する美術家松井えり菜さん(36)=東京=の父・哲也さん(64)と母・玲子さん(63)=倉敷市大島=に3回にわたり語ってもらう。
えり菜は幼稚園の頃から、いろんな習い事をしました。夫と相談しながら、本人が「したい」ということは、何でもさせました。
最初は音楽教室だったかな。2年間して、上のクラスに上がれずやめました。書道はそれなりに続きましたけど、字の上手下手より、小学校低学年で、うったてを書こうと振りかぶったら、元気が良すぎて天井まで筆が飛んでいったことが印象に残っています。今もその跡があるそうですよ。
習い事に関して、「一度始めたことは、最後まで続けさせたほうがいい」という人もいるでしょう。うちは「向いていないことは、しなくてもいい」という考え方。無理に続けても、本人は楽しくないし、ストレスになるだけ。いろいろ試しながら、何が向いているか探せばいいという思いでした。
それは私が教員をしていた時、ピアノや教室の飾り付けが苦手で困ったから。勉強よりも、ピアノが弾けたり、絵が描けたりしたほうが良いということを実感していたからです。
習い事で一番長く続いたのが絵でした。幼稚園くらいだったかな。公民館の絵画教室で興味が湧き、倉敷市や岡山市の絵画教室に通いました。父親から見ると、えり菜は決められた素材を時間内に描くよう言われるのは苦手。自由にしていいと言われると喜ぶタイプだったと思います。
好奇心が旺盛で行動派。小学5年で手品にはまった時は、大阪の手品グッズ専門の店を探して、私たちが知らないうちに電話して、着払いでグッズを取り寄せていました。中学時代は歴史に興味を持ち、愛読書は専門誌「歴史読本」。自分で投稿したり、文通相手を探したり。特に新撰組が好きで、ゆかりの壬生寺(京都市)まで友達と二人で訪れたこともあります。
すべてお年玉の範囲でしていたので、趣味についてどうこう言ったことはありません。習い事と一緒。好きなことを好きなようにしてほしいという方針は変わりませんでした。
中学に入ると勉強に興味が湧き、絵は休止。高校は徒歩数分の青陵高に進学しました。
転機になったのが選択科目の美術の授業。石を描いた油絵を、教育実習でたまたま参加していた美大生から褒めてもらえたらしいです。えり菜は運動が苦手。他の習い事でも、褒めてもらった経験があまりありませんでした。教育実習生の一言がことのほかうれしくて「美大に行きたい」という思いが初めて頭をもたげたようです。偶然ですが、娘の将来を決める大切な言葉をもらえたと、感謝しています。
(聞き手・土井一義)
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