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家庭で非認知能力伸ばそう 中山芳一・岡山大准教授に聞く 自分と向き合う 自分を高める 他者とつながる 子どもに意識付けへ 「いいとこ探し」褒める

/掲載日:2020年09月04日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:12ページ/

人工知能(AI)の進化や高齢化、情報化など、めまぐるしく変化する現代社会に対応する力として、「非認知能力」が教育現場で関心を集めている。読み書きや計算といった点数で表せる「認知能力」に対し、意欲、自制心、社交性などテストでは測れない人の内面にかかわる力のこと。「子どもたちが未来を生き抜くために求められる力」と話す岡山大全学教育・学生支援機構の中山芳一准教授(44)=教育方法学=に、家庭でできる非認知能力の伸ばし方を尋ねた。(則武由)

     ◇

 非認知能力は2000年にノーベル経済学賞を受賞した米国のヘックマンが提唱した。ヘックマンは、幼児教育を施した子どもとそうでない子どものグループを40歳まで追跡調査。幼児教育を受けたグループの方が年収や学歴が高く犯罪率が低かったが、その要因は知能指数(IQ)ではなく、プログラムで得られた粘り強さややり抜く力といった数値化できない能力にあると示した。

 「非認知能力は新しく出てきた特別な概念ではなく、古くから人にとって大切だとされてきたもの」と中山准教授。家づくりに例えると、乳幼児期に育まれる自己肯定感が土台となり、非認知能力は柱や筋交い、認知能力は天井や壁、窓などに当たる。「土台、柱をおざなりにして天井や壁を取り付けても、その家は弱くもろいまま。非認知能力を伸ばすことで認知能力にも良い影響がある」という。小学校で本年度からスタートした新しい学習指導要領では、文言自体は入っていないものの「学びに向かう力・人間性など」として、身につけるべき重要な力の一つに位置づけられている。

 中山准教授は非認知能力を「自分と向き合う力(自制心や忍耐力など)」「自分を高める力(意欲、向上心など)」「他者とつながる力(協調性、社交性、コミュニケーション力など)」の三つに分類する。これらは周囲からの強制で身につくものではなく、「伸ばしたい」という本人の意識が重要と指摘する。大人にできるのは子どもたちの「いいとこ探し」。ここがすてき、伸ばしてほしいと思う行動を褒めて意識付けさせるのだという。

 例えば、いつもは適当に済ませる歯磨きをしっかりするのは自分と向き合う力。近所の人に会ったときに「こんにちは」とあいさつするのは、他者とつながる力に分類できる。中山准教授は「何気ない言動も非認知能力のレンズを通して見ると意識付けのポイントが見えてくる」。「丁寧に磨けたね」「あいさつができたね」と褒めることで、子どもはそれが価値ある行為だと認識できる。

 受験に合格した、部活を3年間やり遂げたといった成果は、プロセスも含めて評価しよう。「よく頑張ったね」と大ざっぱにまとめるのではなく、「あの日、数学の問題が解けなくてかんしゃくを起こしていたのに、気を取り直してもう一度問題集をやっていたね」など、いつのどんな行動を評価しているのか具体的に伝えることが大切だ。

 「新型コロナウイルス感染拡大による現在の状況は半年前でさえ見通せなかった。この先必要なのは単なる学力ではなく、正解が分からない中でベストな方向を見いだす力」と中山准教授。「非認知能力を伸ばすきっかけは普段の暮らしの中にある。日々の生活を学びに変えていきましょう」

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