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幼児の英語 視野広がる 保育園で指導 沢茉莉さんに聞く 「日本語習得と両立可能」

/掲載日:2021年05月07日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:13ページ/  


 2020年度から、小学5、6年生で正式な教科になった英語。社会のグローバル化を反映し、幼少期の習い事としても根強い人気がある。半面、幼少期はまず日本語を確かなものにした方がよいという意見も少なくない。3歳から20年以上海外で暮らし、岡山市内の保育園で外国語を指導する沢茉莉さん(29)は、講演などで外国語への抵抗が少ない幼児期から、英語に親しむことの利点を説いている。(赤沢昌典)

 「言語の習得の速さは言葉を“浴びる”量に比例する。幼児期は遊びの中で自然と吸収できる」と沢さん。保育園で教える幼児は絵本や歌遊び、大人が話す会話を通して、文法を自然に身につけ、学び始めて数週間であいさつや英語での意思疎通ができるようになるという。「ある程度勉強が進んだ後に文法を指導すると、子どもたちは『もう知ってる』という反応。小さい頃は難しいルールを感覚的に理解できてしまう」

 一方で、小さな子どもが日本語もまだ十分に話せないままに、英語を学んでも大丈夫なのだろうか、と心配する意見があるのも事実。沢さんも保護者に相談されることがあるが、3歳で香港に移住し、約20年間、香港と米国で暮らした自身の経験を踏まえ、「日本語と英語の習得は両立できる」と話す。

 沢さんも外では英語、自宅では日本語を使っていた小学低学年の頃、二つの言語が混ざった話し方がしばらく続いた。「でもしばらくすると、それぞれの言語が頭の中で仕分けられるようになり、状況に応じて自然に出てくる言葉が切り替わるようになった」と振り返る。

 米国の大学で幼児教育を学ぶようになり、南カリフォルニア大などが進める第2言語習得時の発達研究の論文に出合った。そこには、同時に複数の言語に触れると言葉が混じって脳が試行錯誤する段階を経て、次第に脳内で整理され、使い分けができるようになるまでの仕組みが記されていた。沢さんは論文を読むことで、自分自身の体験が理論的に納得できたという。

 英語の利点について沢さんは「日本語訳されていない情報に触れ、視野を広げ自分を磨くための大事な道具」と説明する。「それは幼児期も同じで、海外の絵本などを通して世界の多様な文化を学ぶことができる」

 沢さんが、教えている子どもたちを見ていて感じるのは「積極的に話したり書いたりすることに、まだ固さがある」ということ。親子で絵本を読んだり、動画を視聴したりして、家庭でもっと気軽に英語に触れることを勧める。「言語の習得は本来楽しいこと。英語を身近なものにしてほしい」

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