みなさん、こんにちは!岡山生まれ岡山育ち、3児の母、内科医のたかはしじゅんこです。「女性は自由に、男性は長く楽しく、子供はのびのびと」がモットー。普段の子育てや生活などに関して医者の目線も交えながら、ママやパパが毎日を楽しむためのオススメ書籍をお届けします!
自己紹介は、初回をご覧くださいませ。
今回紹介する本を初めて読んだのは、3年前のこと。息子を出産し、2回目のコラムでご紹介した近藤麻理恵さんの「こんまり流Ⓡ片付け」を完遂した後です。
今月、第8回目に選んだ書籍は、その近藤麻理恵さんが当時お勧めしていた本です。
『BIG MAGIC 「夢中になる」ことからはじめよう』エリザベス・ギルバート著、神奈川夏子訳(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
エリザベス・ギルバートさんといえば、2010年に公開された「食べて祈って恋をして」。いい年の女性が一人で海外へ旅に出て、イタリアで美味しいものをたくさん食べて、バリに祈って、本物の恋に落ちる。世間体、常識なんてひとまず置いておいて、自分の心に素直に従って好きなように動く。
これは当時医学生だった私が、たまらなく引かれた映画でした。その年、私は医学科4年生(医学科は6年制)。世の中を知りたくて、世界に出たくて、ヨーロッパに1カ月、インドに9泊10日、一人旅に出ました。
女医のたまご、インドで一人旅。
本当は、インドでなくアフリカに行ってみたかったのですが。私の親は、女性が一人で海外に出ることを心配するたちで。インドならアジアでアフリカよりは身近であり、なんとか許可されることを期待しての選択でした。
実家暮らしだった私が親に黙って行くわけにもいかず、実は渡航前日まで辞めるよう説得されていたのですが、なんとか飛びました。結果的にインドのチョイスが功を奏したのです。渡航前に旅行会社で航空券と初日の宿だけ押さえておいて、「あとはどうにかなるだろう」と飛びました。
振り返っての旅程としては、デリー(1泊)→ジャイプール(2泊)→アグラー(1泊)→デリーに戻り夜行で移動→バラナシ(2泊)→夜行で移動→デリー(1泊)→日本着。
あの時はアレルギー性結膜炎がピークに調子悪い時で。なぜかというと、その前に解剖の授業がありまして。ホルマリンに触れる機会が長かったからか、目の上あたりにずっと湿疹が出ていて、目もゴロゴロ痛かったりかゆかったりしていました。完全に良くなるにはその後かなり時間がかかりました。
インドの首都デリーの空気は特に悪く、砂埃などで視界がぼやけるほどでした。私のまぶた・目との相性は最悪。帰国後、日本はインドと比べて驚くほどに空気が澄んでいたことに感謝しました。私はどこでも生きていけると思っていたけど、インドでは生きていけないとようやく気付いたのです。
現地で使ったお金は合計 10022ルピー+ツアー代26400ルピー=総計 36422ルピー (当時約73000円)。これに航空券往復がプラスされるので、結構使いました。そしてツアー代はインドにしては高い。というのも、インド滞在2日目でとある旅行会社につかまり、あれよあれよという間に旅程を組まされてしまったのです。まさか日本で予約していったホテルでつかまるとは。
あれは何日目だったか、途中でようやく「私の期待した旅と違うし、高い」と気づきました。観光も良いが、現地の人が訪れるインドに触れたかったので。契約書をしっかり見返して、途中からでもキャンセルして返金してもらいました。交渉は口から心臓が飛び出そうなほどドキドキしました。
ツアー中ずっと一緒だったタクシーのお兄さんに、「僕の部屋は虫が出るほど居心地が悪いんだ。君の部屋で寝ていい?」と言われたあの日。いろんな言い訳を駆使して確実に断りました。どれだけ悲しそうな顔をされてもそれは無理。
このようにインドでは、9泊10日にも関わらず、いろんな「黒ひげ危機一髪!」みたいな事件が起こりました。無事に今日本にいられて何よりもありがたいです。
旅の大きな目的の一つは、ノーベル平和賞受賞者のマザー・テレサが活動拠点としたコルカタまで行くことでした。マザー・テレサを尊敬していたので、その原点に触れるために。コルカタにはマザー・テレサハウス(Missionaries of charity Mother Teresa)という死を待つ人の家や、孤児の家などの施設があります。
が、いざインドへ行ってみると、9泊10日の日程では余裕がないことに気づきました。医学科の授業などで下調べもほとんどできていなかったので、行き当たりばったり。
運のいいことになんとバラナシにも同様のハウスがあることが分かり、バラナシ滞在の2日とも数時間ずつ訪問し、名ばかりのボランティアをしました。料理や洗濯などをただ手伝ったり、居住者の話を聞いたり。たったそれだけ。
それでもあの、洗濯物を長い物干し竿にたくさん干していくときに見たあの青い空。子どもたちの溢れんばかりの笑顔。年長者たちのあの落ち着き。彩のある生き生きとした風景を今も忘れていません。
言葉はほとんど通じなくても、そこでまっすぐ自分を生きているそれぞれの強さを感じました。ガンジス川では、「顔は水につけたらさすがに危険だ」と医学生にしてもかなり甘すぎる認識で、A型肝炎や腸チフスなどの予防接種など打っていないのに、泳ぎました。幸い病気には罹患しなかったが、反省しています…。
夜のガンジス川でボートに乗って、火葬場やお祈りを見てお花を流しました。お花は“たくましい”女の子から買って。当時、小さい子どもたちがお金をもらおうとしたり、商売したり、お釣りをごまかそうとしたりする様子を見て、文化の違いに戸惑いました。
「お金ってなんだろう」「私はどうすべきなのだろう」-。今まで考えてこなかった新たな感覚の所在に気づき、どうしていいのか分かりませんでした。だけど今振り返ると、つたない日本語を使い稼いでいこうとする姿は「たくましい」の一言に尽きます。
10年以上経った今、私が訪れた場所はどうなっているのだろう。当時の旅行者に、インドは「また行きたい、行きたくないがめちゃくちゃ分かれる国」と聞きました。確かに。分かる。私のまぶたはあの時限界でした。
180°の異文化に触れたと感じたけど、今は90°程度にお互い近づいているのだろうか?そう思うと、また行ってみたい気がします。
インド9泊10日一人旅のネタは、尽きることがなく。「女性×一人旅」はいろいろあります。
さて前置きが長くなりすぎましたが、BIG MAGICに戻ります。
3年前にこの本を読んだとき、何が一番印象に残ったかというと。最後のとある名前も知らない男性のエピソードです。著者とまったく関係ない男のエピソードにお腹を抱えて笑いました。
もう一つメモに残っていたことは、
「どのみち、誰も私のことなんて気にしてはいないんだ、って」
私たちは、特に今、人目を気にして自分の本当に思うように振る舞えなかったり、自分を押しとどめている方が多いかもしれません。この本では、自分を信じて創造的な生活を送ることを勧めています。その時に大きな障壁になるのは「他人の目」。
インドでは自由に、何も気にせずに振る舞えました。自分の想いに素直に動き、創造性を発揮するのは最高でした。文化の違いに涙が出ましたが、その心の動きも宝物です。そういう感動を、大人になってからも私たちは自由に味わえるのです。
この本を読んで、「私はものを書く仕事をする!」と決められました。決めたなんて言うと仰々しいのですが。創作活動をするのに誰の許可もいりません。不細工でも、未熟でも、好きにすればいいと。惨めでも、弱くても、何が正しいかなんて分からなくても、自分の湧き上がる想いに素直で良くて。私の中にも、光るものがあるかもしれないと信じること。何よりもそう思えたことがありがたかったです。
ちなみに、最後のとある名前も知らない男性のエピソードは今でも大好きです。このエピソードを読むためだけにでも、この本を一度手にとってほしいぐらいです。私は、「自分は場違いかもしれない」と感じた時、今でもあのエピソードが目に浮かびます。
創造性は、きっとみなさんの中にも眠っていると思います。どんな形をしているのかは、きっとみなさんだけが知っていて、私には分かりませんが。
あなただけの、大事な人生。
1冊の本から、豊かにしてみませんか?
読まれた方がいらっしゃいましたら、ぜひご感想を教えてくださるとうれしいです!
それではまた来月!
たかはし・じゅんこ(糖尿病専門医)
小学6年生のときに将来の夢で医者を描き、現役で岡山大医学科へ。医療者のサポートのもと「患者が自分で自分を治療する」糖尿病に興味を持ち専攻する。その後3回の産休・育休を取得。育休中に社会の役に立ちたいとブログを開設し、想いを伝えることの重要性を実感。文章担当として、現在絵本作りにも奮闘中。理想の社会は「女性は自由に、男性は長く楽しく、子供はのびのびと」。5歳の長女、3歳の長男、0歳次女の母。自由な物書き。
Instagramで絵本出版に向けての道のりを投稿しています。いいね・フォローなど嬉しいです。
Instagram:個人 https://www.instagram.com/junko_takahashi_/
絵本: https://www.instagram.com/junmami_ehon/
note: https://note.com/junko0429/
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・ニコニコ女医の、しなやかに生きるessence – 毎日の子育てを豊かに彩るおすすめの一冊 – ⑥私は私のままで生きることにした
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