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「ギャングエイジ」の子どもたち―小学生期の子どもへの接し方/presented by 三宅医院グループ

心の発達の視点から小学生全体を“一まとまり”として見ると、小学生期は直前の幼児期や直後の思春期に比べ、体力や運動機能、言語能力もしっかりとしてきて比較的安定している時期と言えます。

小学生期の子どもの心の発達のキーワードを一つ挙げるとしたら、「知識」という語に象徴できるかもしれません。言い方を変えれば、「とても知りたがる頃…」と表現できるかもしれませんね。

それは勉強に関わる知識だけでなく、「友だちが知っていることは自分も知りたい」といった情報についても貪欲で、「知る・知らない」について良きにつけ悪しきにつけこだわる時期と言えます。裏を返せば「知らないこと」を残念に思う反応も際立つ時期かもしれません。

アメリカの発達心理学者のエリクソンは、この時期の子どもの心の発達を「勤勉性対(VS)劣等感」という対比する言葉で表しています。

こうした心の発達を進めながら、子どもたちの舞台は「家庭」からだんだんと「学校」へと移っていきます。

 

「ギャングエイジ」-学校での集団経験からさまざまな能力を獲得

小学生期の中でも、特に3~4年から高学年にかけての発達期が「ギャングエイジ」と言われる時期です。

「ギャング…なんだか物騒な時期?」と思ってしまいそうですが、そういうわけではありません。

そもそも「ギャング」という言葉は「5~6人ぐらいで仲間になって行動する」「単独ではなく集団で同じことに取り組む」といった意味を示す言葉です。

この時期になると、大脳皮質の発達が目ざましく思考力が高まり、親がつじつまの合わないことを言ったりすると鋭く指摘してくることも上手になります。親にとっては少し手強くなるため「中間反抗期」と呼ばれたりもします。

このような発達を背景にしながら、物理的にも心理的にも親から少し距離がもてるようになり、学校を中心にした友だちや仲間との関わり合いをぐんぐん強めていきます。

その関係の中で、自分の得意なものや苦手なもの、できることとできないことに気付かされながら、能力を獲得していく時期です。

知っていると得意になるが、知らないと心細く思ったり気後れを感じて劣等感のようなものを抱いたりすると先述しましたが、仲間内で交わされる情報についても「知る・知らない」について鋭敏になります。

そんな仲間たちとの関係性の中での「位置取り」の経験は、個性づくりにも影響していきます。このようにこの時期の子どもたちの心は、集団経験に絡みながら少しずつたくましさを獲得していくのです。

 

子どもなりの「ルール」を共有し合う

さて、この時期の仲間の結束力は強く、グループ以外の友だちや親などに対して対立的になったりすることもあります。

またグループ内で秘密を持ったりもします。秘密を共有することなどによって、お互いの結束力を確かめたり高め合ったりするのです。掟のようなものが自然にでき、「絶対守ろう」「裏切ったらダメ」といった“仁義”のようなものもできたりします。

親に対してはちょっと隠したり秘密めかしたり、説明を拒んだりするようになりますから、それまでとちょっと様子が変わって「何か隠さなくてはならないようなマズいことでもあるの?!」と警戒しそうになるかもしれませんが、それには及びません。

確かに子どもなりのルールによって動くので、いくぶん判断に未熟な部分があるのは当然と言えます。しかし、子どもなりのルールを共有し合うことなどを通して、やがて来る親からの自立への階段を上がり始めていると見ることができるのです。

ギャングエイジは「子どもが社会に巣立っていくためのウオーミングアップの場」と考えられ、子どもの心の発達に重要な役割を持つのです。

一昔前であれば、「クワガタがたくさんいるあの木は僕らだけの秘密の木だから、今日はほかのやつには言わないで行こう」など自然を相手にした活動で典型的に見られましたが、今ではギャングエイジの子どもたちの行動がこんな形で見えることは少なくなっています。

しかし、例えばゲームの攻略法の情報をある友だちとだけ教え合っていたり、「〇〇君の家は集まってゲームをしていても割とおばちゃんが何も言わない…」-そんな“情報”の共有も仲間でのつながりを経験させていると言えましょう。

 

時には大人の介入も必要

一方、気掛かりなのはちょうどこの時期、クラスの中にいじめのグループができたりすることも残念ながら珍しくありません。

「小集団での経験」がこの発達期の課題であることを思うと、このような行動もこの発達期独特の心の力動性の一つとみることができるでしょう。しかし事が「いじめ」といった場合、大人が感度良く介入していくことが必須でしょう。

「集団の力動性を経験する」という発達のエネルギーが、いじめのような好ましくない舞台ではなく、意義深く生産的な関係性の上で展開されるような配慮や働きかけこそは、大人が見落としてはならないことです。

思い起こせば、小学校に入って間もない1~2年生ごろ…このころはまだ幼児的なところを残しながら大好きな大人、つまり親や先生など大人が「してはいけない」と言うことは「してはいけない」と素直に信じ、守ろうとする時期でした。「大人から教わったこと」=「自分が知っていること」とし、それをとても得意に感じたりしていたのです。

例えば「もうちょっとしたらだんだん日本が狭くなっていくんだよ。南極の氷が溶けて海の水が増えるからだよ~。お父さんが言ってたもの」「ほんと?じゃあボクは△△先生に聞いてみる!」のような発言などが思い出されます。確かにかわいかったですね。

でもそんな時期を過ぎてギャングエイジとなった今、子どもたちはずいぶんたくましく成長していることに気づかれることと思います。

 

最後に、ある保護者のお母さんと交わしたQ&Aご紹介します。

 

Q.

4年生の息子が休日の昼前、2~3人のお友だちが自転車でやって来たかと思うと「ちょっと行ってくる」と言って出掛けていきました。

どこに行くか聞く間もなかったので「すぐ帰るのかな…」と思っていたところなかなか帰らず、日暮れ前になってようやく帰ってきました。以前は「ママ、〇〇くんと△△に行っていい?」などと聞いてきたのに…。最近は何も尋ねてきませんし教えてもくれません。

一体何をしていたのか心配でなりません。こんな時、「今日はどこへ行ったの?」「だれと一緒だったの?」「そこへ何時までいたの?」「それからどうしたの?」と問いただしてもいいですか?

A.

まずは、帰宅後の表情や様子が気軽で明るく機嫌も良い▽食欲も普通▽ちょっとした頼みごとも何気なくしてくれる(「ちょっとそこのドアしめてくれる?」「はーい」)などからお子さんの心身の健康さを確認し、落ち着いた様子ならそれで「まずはOK」と考えてあげましょう。

どうしても知りたかったら、「え?今日は何か新しい発見とかあった?」「お腹空いたでしょ?大丈夫だった?」「お昼には何かおいしいもの食べれた?」など、子どもたちが今日充たしたであろう好奇心や出逢ってわくわくしたことを「お母さんも聞きたいな…」といったニュアンスで聞いてみたり、「お腹が空いたり寒かったりしなかった?」といった基本的に身を案じる質問をするのがコツです。

そこをきっかけに、子どもが話してくれることに「ああ、そうだったんだね」「へー、そんなこと初めての経験だねえ…」などと楽しい会話に広げてあげると良いでしょう。お母さんが楽しんで聞いてくれていると感じたら、子どもも語りたくなったりします。

 

頭から情報をチェックするような質問はやめておきましょう。子どもは自分が信頼されていると感じることができにくくなってしまいます。この時期の子どもは、自分は信頼されていると感じることから、その信頼に見合うような行動や態度を身に付けたいと思うようになるものです。

(三宅医院 臨床心理士 清板芳子)

 

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