Home>ライフ

[ ライフ ]

女性のキャリアづくり支援座談会~令和のママたちのおしごと事情~<前編>導入・復職

女性の社会進出や活躍が注目されて久しい昨今。

自治体の支援や、企業の働きやすい職場づくりは一見進んでいるようでもあります。

「が、実際はどうなの?」 

妊娠・出産・育児というライフイベントによる環境の変化から、キャリア形成や職場復帰、子育てとの両立などに悩みや不安を抱えている女性はまだまだ少なくありません。

そこで今回は、「女性のキャリア形成」をテーマに各立場の4人の女性にお集まりいただきました。

女性のキャリア形成支援を手掛けながら、仕事や育児の両立に取り組む立場からの経験談や意見をぞんぶんに語り合っていただきました。

参加者(写真右から)

  • 株式会社LASSIC CEO 相坂サオリさん

岡山市出身。大手広告代理店を経て2020年に起業。主に法人向けにマーケティングPR支援事業、個人向けにキャリアデザイン事業を展開し、国家資格キャリアコンサルタントを取得。ワーママや女性のキャリア支援に尽力。4歳と1歳女児のママ。

  • LaLa編集部編集長 ボウズ満恵さん

岡山市出身。DV、両親の離婚、国際結婚、発達障害児の子育てなどの経験から子育て支援活動を始める。「NPO法人ハレハハ」代表を経て、2024年より一般社団法人「吉備オープンイノベーション協会」で女性活躍推進プロジェクトを担当。17歳(高2)女児、15歳(中3)男児のママ。

  • 医療法人社団 華城会(はなふさ歯科医院)法人事務局 山本彩さん

玉野市出身。同医院で人事採用を担当。8、5、2歳の3児のママで、自身も約3年半の産休・育休を経験し仕事に復帰。職場の女性スタッフたちのアドバイザー役でもある。

  • 株式会社はたらこらぼ 代表取締役 日下章子さん

株式会社リクルート勤務を経て29歳で独立。2010年に「株式会社はたらこらぼ」を設立。「はたらく を たのしく」を理念に、地元企業の人材採用サポートや地域の人と仕事とを繋ぐ仕組み「しごとコンビニ®」を全国に広げている。自身も仕事とのバランスを取りながら子育てに励む。

 

-女性のキャリア支援を手掛ける相坂さん。これまでの経緯と現在のお仕事、お仕事を通じて感じる「女性のキャリア形成の実情とハードル」についてお話しいただけますか。

相坂  大学入学とともに上京し、東京の広告代理店で雑誌のプランナーをしていました。

深夜までの激務を続けながら29歳で結婚したのですが、子どもがなかなか授からなくて。

不妊治療を機に退職し、フリーランスのPRプランナーとして独立しました。

独立後に幸い2児を出産したのですが、親元から離れていたので子どもの預け先がなく、もちろん育休もないので仕事が大変でした。

会社員時代に“キャリア迷子”になって悩んだことで、「女性のキャリア形成の役に立てないか」とキャリアコンサルタントの資格を取得。

現在は個人向けのキャリア支援法人向けマーケティング・PR戦略の支援を行っています。

 

-相坂さんありがとうございます。ご経験を生かして地元岡山でリ・スタートされたのですね。ボウズさんは岡山で独自の支援に取り組まれています。

ボウズ 生まれも育ちも岡山で、熊本で1年就職したのち岡山に戻り、子育てを機に同じ悩みを持つママたちの支援活動を始めました。

私自身、幼少期の家庭問題や国際結婚、不妊治療などを経験して、環境ではなく親の生き方が子どもの育ちに影響するのだと気づきました。

特に女性にとって、いまや仕事のウエートは生活の上位を占めています。

今は、女性の働き方を副業と起業の両軸でサポートしていこうと準備しているところです。

 

-山本さんは勤務先の医療法人で人事採用に携わる一方、ご自身も産休や育休を経験されています。

山本 岡山市南区のはなふさ歯科医院などを運営する医療法人社団 華城会で人事採用を担当しています。

これまで約15年のうち9年間は受付や事務を担当していましたが、30歳を機に法人全体の人事や採用、SNSなどでの広報を担当するようになりました。

長女を出産した8年前は、まだ妊娠中に働く人があまりいなくて。つわり中に仕事をするしんどさや、それが理解されない苦しさがありました。

想像していた妊婦生活と違って精神的にきつかったのを思い出します。

今は、同じ立場のスタッフたちの働き方や、妊婦さんの悩みに少しは寄り添えているかな。

「味方だよ」っていうのが伝わればよいなと思ってコミュニケーションを取るようにしています。

 

-日下さんも、出産を通じて仕事への向き合い方が変化したそうですね。

日下 物心ついたときから「起業したい」と思い、仕事が趣味のような人間で。

リクルート時代も独立後もハードに仕事をしていました。

働き方をガラッと変えざるを得なかったのは、流産を経た2度目の妊娠で半年が経過したとき。

法人化や初めての雇用、新規事業開始に向けての無理がたたり、お医者さんに「あなた母親でしょ」と怒られたことがきっかけになりました。

出産後は、「経営者で自由が効くから」と家事や育児の多くを担うことになり、「なんで女性ばかりが」と思いながらも寝る時間を削って仕事をし、お客さま先にも子どもを連れて行って働いていました。

今は、周囲の協力を得ながら、オンラインを活用して子育てと仕事を両立しています。

 

-そうでしたか…。お二人のような葛藤や悩みを抱える女性は多いとお聞きします。相坂さんは、キャリアに悩む女性に対してどのような支援を行っていますか?

相坂 私のお客様も、ママになる前後で働き方に悩んでいる方が多いです。

仕事が好きで続けたい、でもご主人や子どものことなど外的な要因でキャリアチェンジを考えている方。

たとえ復職できても、「思うようなポジションで働けない」「時間にゆとりをもって働けない」という悩みを抱える女性が多いですね。

ご相談を受け、「目の前の課題」「長期的な視点」とでお話をしています。

多いのは、出産や育児を機に女性の仕事内容が限定される「マミートラック」の問題ですね。

それに対しては「会社や上司との復職後の面談などで、自分の意思を伝えてみましたか?」とお聞きします。

「どうすればこの仕事が回せるか」という具体的な話ができるとなおよいですね。

長期的には、「今は時短勤務や育休で出世や待遇に遅れが出たとしても、余力があるうちに将来のキャリアアップのための自己研鑽の時間にしてはどうですか?」などとご提案しています。

私自身の経験も踏まえて、キャリアの選択肢を広げたり、俯瞰して新しい視点が持てるよう長期的にキャリアを描くことをおすすめしています。

-岡山特有の課題があれば、また、どのような支援や解決策があるでしょうか。

ボウズ 私自身は、子どもに特性や持病があったので、近くにいる母に頼りたかったのですが、「やはり子どもは自分で育てるもの」みたいに言われ働き方を変えざるを得ませんでした。

当時はそうでしたが、今は岡山市の場合、病児保育やファミリーサポート、保育施設の開設も増えてきて、緩やかですが支援が広がっています。

家族以外の預け先を確保しておくことはすごく重要ですね。

一方で企業の経営者や人事採用の方にお聞きすると、復職時に必要な学びの場や相談窓口は設けているのに、“必要な方”が離職してしまうと。

ママたちをサポートしていて感じるのは、当の女性自身が「制度を整えてもらっているのに、自分が役割を果たせていない」と思い込んでしまう、自己肯定感の低さなのかな。

やはりメンタル面でのサポートが必要だと思います。

 

-はなふさ歯科医院ではサポート体制や職場環境づくりが進んでいるそうですね。ご自身の産休・育休経験から気を付けられていることはありますか。

山本 うちは育休中のスタッフがよく顔を出してくれるんですが、育児に一生懸命で息抜きができないとか、「復職して両立できるかが不安」とか「保育園に入れない」という切実な声も聞きます。

人事採用担当として気を付けているのは、その人が「キャリアアップしたいのか」「子どもとの時間を優先したいのか」「収入をアップしたいのか」をしっかり聞いて対応を考えることですね。

歯科衛生士など技術職の場合は急な休暇への対応が難しいこともありますので、上司とも相談の上、よりよい休み方や働き方のアドバイスをしています。

 

-日下さんは、「はたらく を たのしく」を理念に、ご自身のワークライフバランスも取りながらお仕事をしていらっしゃいます。どのようなサービスをしていらっしゃいますか?

日下 自治体と連携して、高年齢者や子育て中のママが短時間からでも働ける「しごとコンビニ®」という仕組みを自治体さんと連携してつくっています。

自分自身が妊娠し育児をする過程で「短時間だけでも社会と繋がれる場所があることの重要性」などを痛感しながらつくったため、とても想い入れのある事業です。

また、自社の働き方もフルリモート・フルフレックス・残業禁止など、プライベートを大事にできるような工夫をしています。

-女性の復職をサポートするには、何が必要でしょうか。

相坂 企業の制度はかなり充実してきましたが、「『女性』も『仕事』も『子育て』もフルで頑張ってる」「もうこれ以上頑張ってどうするんだ~!」みたいな気持ちもちょっとあって。

女性だけが頑張るのではなく、男性の家庭進出を促すための支援も必要ですね。

「企業や家庭との仲介役」の存在が大事なのではないかと。

私自身が、そういう役割になれればと思っています。

ボウズ やはりメンタル面でのサポートは必要だなと思います。

定期的に産業医の先生の相談窓口を設けている企業も岡山にはありますが、誰にも相談できないことを話せる場があるとよいですよね。

そういうコミュニティづくりを岡山から始めることで、地方都市だからこそできる解決策を見出していきたいです。

(後編に続く)

 

>一覧に戻る

LaLa Okayama 会員登録

Access Ranking

Present

プレゼント