仕事で活躍している女性ってキラキラしていて憧れる。
でも起業となるとハードルが高くないですか?
大変なことが多いとは思うけれど、自己実現を目指す姿は素敵です。
子育て、家事を抱えながらどうやって起業の第一歩を踏み出したのでしょうか。
前編に続き、4人の女性たちにこれまでの経験や思いについて聞いてみました。
-まずは大手企業社員から起業家に転身された相坂さん、起業に踏み切った心境や経緯を教えてください。
相坂 東京の大手広告代理店でプランナーとして多忙な毎日を過ごしていました。
会社員のころ、仕事は大変だったけど、楽しかったしやりがいもありました。
しかし業界的にも“激務”な働き方だったので、「このまま子どもができないのではないか」という不安が常にありました。
そして子どもができて復職したとしても、「またあの忙しい働き方で子育てもできるのかな」と上の世代を見て少し怖かったのを覚えています。
退職した直後は、今までの忙しい日々から解放されて幸せでしたが、しばらくすると「何者でもない自分」に耐えられなくなってきました。
なんだかんだ仕事が大好きだったんです。
結局、「働き方は自分でコントロールしながらキャリアアップをしていく」という選択肢が起業しかないことに気づき、起業を選びました。
起業してから2回出産して、法人向け・個人向け事業も展開でき、今はビジネスに注力したい時期なので、実家のある岡山で両親のサポートを受けながらビジネスを行っています。
-岡山で起業されたボウズさん、日下さんにもお聞きします。
ボウズ 地域のまちづくり、子育て、防災などのボランティア活動をきっかけに、「こんなこともできませんか」と多方面からお声がかかるようになりました。
「社会を大きく変えるには、企業の力を借りるほうが確実な一歩を踏み出せるのではないか」と思い、企業と連携した活動にシフトしました。
そして今、「育休復帰と起業」をテーマにしたプロジェクトを立ち上げたところです。
日下 物心ついたときから起業すると決めており、その修行の場として株式会社リクルートに入社。
退職半年ほど前から起業に向けて具体的な準備を進め、2010年に女性2人で起業しました。
そのころの岡山では女性の起業家はめずらしく、メディアから「女性起業家」として取り上げられたりもしました。
「仕事が趣味」のような人間だったので休む間もなく働いていましたが、子どものために働き方を大きく見直しました。
現在は、多様な人が自分の望む生き方を実現できる仕組みを自治体と連携して広める仕事をしています。
-山本さんは今歯科医院に15年間お勤めですが、起業家の女性に対してどのようなイメージをお持ちですか?
山本 SNSで若くして起業した人の投稿を見ていると、「キラキラしていいな」ってうらやましく思います。
自分は朝子どもを怒りながら送り出して、すべり込みでタイムカードを押す毎日なのにと…。
でも、起業された皆さんにもきっと裏には多くの苦労がおありなのでしょうね。
-起業当時にどのような困難やご苦労がありましたか。それをどう乗り切られましたか。
相坂 代理店時代は大きなプロモーションを動かしていましたので、「何でもできる」って勘違いしていたんですね。
いざ独立すると、単体のフリーランスとして受ける専門的なスキルが全くなかった。
“大きな組織の歯車の一つ”だったんだなと痛切に感じました。
一から小さな仕事をこなしているうちに、私が得意とするマーケティングやPRが皆さんに求められることがわかり、事業が軌道に乗っていきました。
それと、2回出産を経験してつくづく「育休ってうらやましい」と思いましたね。
社会のインフラをもっと整備すれば、「起業に踏み切れる女性」が増えるんじゃないかと感じます。
ボウズ 私を含め、これまでお会いした岡山のママたちも、皆さん社会に対して感じる「思い」がきっかけで起業した方が多いですね。
実際起業してみて思うのは、自分にアピールできる軸がないとマネタイズするのが難しいということ。
それとNPO法人を立ち上げた頃はまだ学童保育の枠が少なくて、子どもの「放課後問題」に苦労しました。
日下 起業したのがちょうどリーマンショック直後のタイミングで。
「こんな不況の時期に人材採用の仕事なんてうまくいくのか」と周囲から言われました。
確かに当時、人材採用の仕事はなく、どんな仕事もチャンスと捉えなんでもしてきました。
2、3年後には採用を再開する企業も増え始め、本来したかった採用の仕事ができるようになりましたし、ご縁あって「しごとコンビニ®」などさまざまな自治体さんとも仕事を行えるようになりました。
-山本さんは、起業について考えられたことはありませんか?
山本 そうですね。皆さんの姿を見てうらやましくはありますが、今の自分に「何ができて」「何が得意で」「何に自信があるか」というと何もなくて…。
「時間がない」とか「才能がない」と悩んでばかりですが、何かしたいことがはっきりしている方がよいのでしょうか?
相坂 起業のハードルが下がった反面、山本さんのように迷える女性も多いのかもしれませんね。
今は、特別なスキルがなくても起業に挑戦しやすくなっていますよ。
ただ、もてはやされている「オンライン起業」「SNS起業」の中には、実態がよくわからないものもあるので注意しましょう。
稼げるからと安易に流されてしまうのではなく、しっかりとした自分のビジネスモデルややりたいことのビジョンを描けるとよいですね。
-女性にとって起業のハードルが高い理由はなんでしょうか。
相坂 そうですね。よく皆さん「失敗が怖い」って言われますが、なぜかと考えてみると、今の日本って失敗に対する寛容さがなく、起業に失敗すると元のポジションに戻れないというような社会通念があるからじゃないかと。
もっとチャレンジに寛容な文化を作り、ポジティブに失敗から学ぶことを伝えていくべきだと思います。
それと、起業といってもスタートアップ系もあれば、スモールビジネスもあります。
「自分のできることから手堅くチャレンジできるよ」と伝えていきたいですね。
ボウズ 相坂さんのおっしゃるように、「失敗が怖い」とよくお聞きしますね。
私は最近言っているのは、「打席に立ってないのにホームランは打てないよ」と。
「あんな風になれない」と尻込みするけれど、「何万フォロワーがいるような人をいきなり目指すの?」とも。
小さくチャレンジして失敗を繰り返すからこそ、自分自身の仮説検証もできると思うんです。
そこで今取り組んでいるのは、起業前に自分の得意分野を試す場所の提供です。
お料理教室やSNS発信の勉強会などを通じて、みんなと一緒にチャレンジする機会を作っています。
地方では何か共通のキーワードで集まるコミュニティが重要な役割を果たしているんじゃないでしょうか。
-皆さんのアドバイスをお聞きしていかがですか。
山本 可能性は無限大というか、自分が想像して勝手に壁を作っているんだとわかりました。
いろいろな方からいろいろなアドバイスや支援を受けられることを知って、すごく刺激になりました。ありがとうございます。
-最後に、起業を考えている人、ためらっている人へのアドバイスをお願いします。
日下 「起業」っていうと「お金を借りなきゃいけない」とか、「失敗できない」という高い壁を感じるのかもしれないので、新しい言葉ができたらいいですよね(笑)。
私、人から見ると結構いろいろな失敗をしているほうだと思うんです。
でも、その失敗から学ぶことの方が多くて、「今の自分を作ってくれる土台」となっているので自分では失敗と思っていなくて(笑)
人生は一度きり。後悔のないように、”やりたいこと”をやったほうがいいと思います。
ボウズ 岡山県をはじめ、市町村でさまざまな制度や取り組みをしていますし、私のような民間企業もいろいろな活動をしているのでぜひ利用してほしいです。
この記事を読んでくださったママたちがLaLa Okayamaで集って、働くことについて話せる機会ができるといいですね。
何より、自分の「好き」を見つける時間っていうのを生活の中に持ってほしいですね。
相坂 ライフステージの転機を、「キャリアを断たれた」とネガティブにとらえるのではなく、自分で好きなようにキャリアをカスタマイズし続けることで、自分らしいキャリアを描いていくきっかけにしましょう。
自分自身の力を信じ、積極的にチャレンジしてほしいですね。
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・女性のキャリアづくり支援座談会~令和のママたちのおしごと事情~<前編>導入・復職
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