「出産」という言葉を聞いて、皆さんは何をイメージしますか?
痛い・つらい・不安という声をよく耳にしますが、視点を変えれば、母親の体の中で命を育み、生み出すこと。
「出産」はとても素晴らしいことだと思いませんか!?
出産に向けてベビー用品の準備も必要ですが、それ以上に大切なのが、親になるための心の準備です。
そこで、現役助産師のシャノン香織さんに、“妊娠中からのママの心と身体づくり”の方法やポイントを取材。
今回は『ペリネケア』についてお伝えします。
皆さんは「ペリネケア」という言葉をご存じですか?「ペリネ」とはフランス語で骨盤底筋群を含む骨盤底全体のことを言います。その部分をケアすることを「ペリネケア」と呼んでいます。「骨盤底筋群」や「ペリネ」と言っても、それが自分の体のどこにあって、いったい何なのか、まだまだ認知されていないのが現状です。
「骨盤底筋群」とはその名の通り骨盤の底の部分にあり、膀胱(ぼうこう)・子宮・腸などの骨盤内臓器を支えてくれているハンモック状の筋肉のことです。立っていても座っていても、眠っている時以外は常に働いています。
妊娠中はおなかの赤ちゃんの体重などで重くなった子宮を支えており、出産時には赤ちゃんが産道をスムーズに通過しやすいように緩み、産後は安静にすることである程度出産のダメージから回復し、また産前のように骨盤内の臓器を支えてくれます。
このように骨盤底筋群は妊娠・出産・産後を通して、強くしなやかに働いてくれています。もちろん、妊娠・出産を経験しない女性にとっても大切な筋肉になります。
ここ最近では、生活様式の変化による日常生活での身体の使い方や姿勢の変化により、本来骨盤内の臓器を支える役割を持つ骨盤底筋群が使われていなかったり、負担がかかることで、尿漏れや便秘、腰痛などさまざまな身体の不調につながってきています。
例えば、尿漏れですが、ドラッグストアなどに行くと、尿漏れに関する商品がたくさん棚に陳列されていますね。尿漏れは当たり前や仕方がないことではなく、“骨盤底筋群がうまく使われていないこと”によって起きている可能性も考えられると言われています。
また、海外の統計データによると、経膣(ちつ)分娩をした人の約3割の骨盤臓器脱がみられると言われており、80歳までに10%程度の人が骨盤臓器脱や尿失禁による手術療法を受けるとされています。「骨盤臓器脱」とは膣のヘルニアなどとも呼ばれ、子宮・膀胱・尿道・小腸・直腸などが女性器(膣)に下垂し膣外に出てきてしまう病気です。下腹部に違和感がある、子宮が下がる感じがする、トイレに行ってもスッキリしない、ピンポン玉のようなものが出てくる、といった症状があります。
ペリネケアをすることによって身体の不調が改善したり、将来起こり得る骨盤内の臓器脱を予防することができます。
【基本の腹式呼吸】
①背筋を伸ばして、姿勢を正します。
②尿をこらえるようにきゅっとペリネ(膣の辺り)を引き締めて、下腹から空気を上へと絞り出すイメージで口から息を吐きます。
③下腹がぺたんこになるまで息を吐き切ったら、ゆっくりとおなかとペリネの力を緩めます。
④自然と空気が鼻から入ってくるので、またペリネを意識しながら息を吐きます。
腹圧をかける習慣をやめることです。重いものを持つ時は腰を曲げるのではなく、膝をかがめるようにしましょう。それ以外にも、日常的に便秘の人は排便習慣を見直し、排尿・排便する時にはなるべく腹圧をかけないようにすること。また、背もたれに背を預けて座る人は背筋を伸ばして座るようにしましょう。
「息を吸って~」「息を止めて~」「さあ、いきみましょう」というように、赤ちゃんを産み出す時、息を止めて「いきみ」をかけることがほとんどかもしれません。息を止めていきむことは骨盤底筋群に負担を余計にかけてしまったり、会陰が急に伸ばされ、裂傷のリスクを高めることなります。
出産の経過が順調で効果的な陣痛があれば、息を止めてのいきみは必ずしも必要ではありません。息を吐きながらいきむこと、イメージするならば「息を吐きながら排便する」―。これができれば出産の時にも必ず役立ちます。
このようにペリネケアは特別なことではなく、どれも日常生活の中でできます。妊娠・出産・産後は点ではなく線でつながっており、普段の過ごし方がとても大切です。また、ペリネケアは、継続することで必ず効果が現れ、出産への準備となり、女性の人生を楽しむことにつながっていきます。
まずは、ペリネを意識して過ごすことから始めてみましょう。そして、近くに骨盤底筋のエクササイズをしている施設があればぜひ相談に行ってみましょう。より効果的にペリネケアが行えますよ。ただし、妊婦さんはマタニティーを対象にしているインストラクターのもとで行いましょう!
シャノン⾹織さん
倉敷市真備町生まれ。2児のママ。倉敷市内の総合病院・個人病院に勤務後、2019年に自宅にて「産前産後サロン 助産院あいのわ」を開業。
『ココロオドルほどのしあわせな出産・しあわせな母乳育児をしよう』をコンセプトに、妊娠中からの心づくり&身体づくりで笑顔で産前産後を過ごせるようお手伝いしています。すべてを包み込んでくれる柔らかな笑顔と語り口調に「話すだけで心スッキリ!」「ゆったり安心する」と産前産後のママから大人気の助産師さんです。
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