「離乳食の時期、むし歯予防のため親子でスプーンやコップなど食器の共有は避けたほうがよい」という情報が広がっていますが、今年8月に日本口腔衛生学会から「科学的根拠は必ずしも強くない」と発表されました。
赤ちゃんのむし歯予防に際し、祖父母への不満や家族のスキンシップへの不安を感じるお母さまにお会いすることもあります。
赤ちゃんの心身発達において、スキンシップやご家族の温かい関係性はとても大切。
今回は、上述の学会発表の概要を解説し、赤ちゃんと過ごす日々の不安を少しでも解消できればと思います。
最近の研究で、離乳食を始めるより前の早い時期、すでにお口の中に細菌が見られることが確認されています。
日々の親子のスキンシップを通して、子どもは親の唾液に接触します。
なので離乳食期、食器の共有を避けることで感染を防ぐことを気にしすぎる必要はありません。
むし歯の原因菌としてよく耳にするミュータンス菌ですが、親のミュータンスレンサ球菌が子どもに感染することは今までの研究で確認されています。
お口の中には数百種以上の細菌が存在していて、他にもたくさんの菌がむし歯の原因となり、ミュータンス菌だけが原因ではありません。
むし歯は砂糖の摂取や歯みがきなどさまざまな要因で起こるため、食器の共有とむし歯の関連を調べるにはそうした要因を考慮する必要があります。
むし歯に関連する複数の要因を調べた日本の研究では、3歳児において親との食器共有とむし歯との関連性は認められていません。
親から子どもに口腔細菌が伝播したとしても、砂糖を控えて毎日歯みがき&仕上げみがきを行い、フッ化物を有効に使うことでむし歯を予防することができます。
まとめ
以上のことから、お子さんのむし歯予防のために家族間での食器共有を避けることに力を注がなくて良いということをたくさんの方に知っていただきたいと思います。
むし歯予防の基本は今も昔も「砂糖を控え、食生活のリズムを整えること」、そして「歯みがきや定期的なメンテナンスでお口の環境を整えること」です。
根拠の不確かな感染予防のために力を注いで疲れてしまったり、祖父母やお父さんと喧嘩になってしまったお母様にたくさんお会いしてきました。
どんなに気をつけても無菌で育つわけではありません。この学会からの発表をきっかけに、スキンシップを遠慮したり、食器にピリピリしたりすることなく、家族の団欒を心から楽しむことができるようになれば嬉しいです。
詳しく知りたい方は、日本口腔衛生学会ホームページ内に原文があります。
意見・回答「乳幼児における親との食器共有について」をご覧ください。
▽原文は日本口腔衛生学会ホームページ内「意見・回答『「乳幼児における親との食器共有について』」をご覧ください。
横道由記子
子どものころ、むし歯だけでなく歯並びに悩んで矯正治療を受けた経験から「予防歯科」という言葉に引かれ、地元岡山大歯学部で学び平成25年に和気歯科医院院長となる。むし歯予防だけでなく、噛み合わせにおいても原因を見つけ治療と合わせて予防していく考え方を学び、医院では我が子の子育てで悩み・学んだことを生かして小児歯科・小児矯正歯科を担当。地域の幼・保育園や公民館での子育て支援事業や企業主催の健康教室などで、健康なお口と心身を育むサポートを積極的に行っている。
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