キシリトールは白樺や樫の木から取れる糖分から作られ、砂糖と同程度の甘さを持つ糖アルコールの一種です。
他にもイチゴやラズベリー、カリフラワー、レタス、ほうれん草などにも多く含まれており、人体内でも生成されています。
北欧諸国では天然甘味料として多用され、国内でもキシリトールガムやキシリトールタブレット、赤ちゃん用の歯磨きジェルなど、むし歯予防をうたう様々な商品が販売されています。
今回はキシリトールの効果や使用上の注意点、子育てやお口育ての視点から当院でどのようにお話ししているかについてお伝えします。
キシリトールはむし歯の病原菌として知られる「ミュータンス菌」に分解されず、歯を溶かす酸の原料にならないのが特徴です。
ミュータンス菌はエネルギーを使ってキシリトールを取り込みますが、酸を作ることができず捨てる→取り込むを繰り返し、エネルギーを無駄使いします。
この作用により、キシリトールはミュータンス菌の増殖や歯垢の形成を部分的に抑えるといわれています。
キシリトールは甘みがあるため、お口に入れると味覚を刺激し、唾液分泌を促進します。ガムとして噛んだ場合、咀嚼によっても唾液分泌が促されます。
唾液は「食べカスを洗い流す」「菌が作った酸を中和する」「再石灰化を促す」などの作用で、初期のむし歯を修復してくれます。
キシリトールのむし歯予防効果を調べた論文はたくさんありますが、「低濃度のキシリトール製品では有効性について明確なエビデンスはない」という結果が多い一方、「高濃度のキシリトールガムが歯垢の蓄積を減少させた」という結果もあります。
岡山大の研究では、妊婦50人に妊娠6カ月から産後9カ月まで一日平均3個のキシリトールガムを噛んでもらった結果、乳幼児に対してミュータンス菌の減少が認められました。
また子どもが1歳半になった時点でむし歯菌に感染した割合は、ガムを噛まなかった母親たちの子どもと比べると半分以下だったようです。
この研究で使用されたのはキシリトール100%のガムでした。
歯磨き後にキシリトール製品をなめることを推奨している製品もあるのは事実です。
むし歯予防効果を引き出すためということですが、私自身はお子さんが歯磨き後に甘い製品を食べることはお勧めしていません。
歯磨きが嫌いな乳幼児にご褒美として与えるという方法も耳にしますが、むし歯予防の大前提としては糖分をコントロールして食生活のリズムを整えることがとても大切です。
「ぐずったら甘いものをもらえる」という学びを子どもに与えることは避けたいと私は考えています。
他のお菓子と同様に少なくとも3歳まで、できるなら小学校入学前まではキシリトール製品も含め、お菓子を控えて健やかな味覚を育てることが重要だと考えています。
すでに砂糖の入ったガムやチョコ、グミなどを食べている場合は、砂糖を含むお菓子の代わりにキシリトールのお菓子を与えることでむし歯の原因を減らすことができます。
ただキシリトールの濃度が低い製品や、一緒に入っている他の甘味料にむし歯の危険がある場合もあるので選び方も大切です。
小学生ぐらいになると、唇を閉じて噛む練習や舌を使う練習としてキシリトールガムを使ったトレーニングをお勧めしています。
100%キシリトールガムは、つわり時期の妊婦さんのむし歯予防法としても効果的です。
今回はキシリトールのむし歯予防効果についてお伝えしました。気になることがあれば是非かかりつけやお近くの歯科医院でご相談ください。
横道由記子
子どものころ、むし歯だけでなく歯並びに悩んで矯正治療を受けた経験から「予防歯科」という言葉に引かれ、地元岡山大歯学部で学び平成25年和気歯科医院長となる。
むし歯予防だけでなく、噛み合わせにおいても原因を見つけ治療とあわせて予防していく考え方を学び、医院では我が子の子育てで悩み学んだことを生かして小児歯科・小児矯正歯科を担当。
地域の幼・保育園、公民館での子育て支援事業や、企業主催の教室などで健康なお口と心身を育むサポートを積極的に行っている。
授乳、抱っこ、離乳食、むし歯予防、歯並びのことなど、歯医者さんに聞いてみたいことを公式LINEから無料で相談できます。
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