皆さんのお子さんはこんな食べ方をしていませんか?
・詰め込みすぎる
・噛まずに丸のみする
・片側で噛む癖がある
・口を開けてくちゃくちゃ食べる
これらの食べ方は幼少期、みじん切りやペースト食が多く、手づかみ食べをあまりしなかったお子さんによく見られます。
原因の一つと考えられるのは、「前歯で一口量をかじり取る過程」の学習不足。
自分の手で食べ物を口に運び、前歯でかみ切ることを繰り返し経験して「一口量」の感覚をつかむことは、上下の乳前歯が生える頃にのお子さんにとって重要なプロセスです。
スルーして食べ物を口の奥まで入れてしまうと、唇と前歯を使って食べ物を捉える感覚が育たず、一口の量を学習できなくなってしまいます。
また唇と前歯を適切に使うことができないと、口周りの筋肉が十分に発達せず「おロポカン」にもなってしまいます。
今回は、成長後にも影響を及ぼす「適切な食べ方とその重要性」についてお伝えします。
一口量を学習するには、「前歯でかじり取れる大きさで詰め込みできない食材」を用意します。
手づかみ食べ初期段階は、押し込めば口に入る大きさ・柔らかさの食材では無理やり押し込んでしまうこともあるので危険です。
詰め込もうとしても口に全部入りきらないくらい大きな食材の方が安全。
食材を詰め込もうとしてえづいたり吐き出したりすることも、安全に食べることを学ぶ一つの過程です。
奥歯がない時期のお子さんには、例えばおでんの大根や煮物、太いスティック状のゆで野菜など、大きいけど顎や舌、歯茎でつぶせる硬さで。
奥歯が生えているお子さんは、骨付き肉や大きく切った野菜、大きなおにぎりなど様々な食材にチャレンジしてみましょう。
子どもは食べ物を目で見て手で触ることからはじまり、落としたり口に突っ込みすぎたり吐き出したりといろいろな経験を積んで食べる技術を学習していきます。
しかしその過程にはリスクも伴います。
必要な経験を重ねられるよう、学習するお子さんの安全を見守ることが大切。
「もしも」に備え、ご家族が窒息の対応などについて知っておくことも重要です。
また幼少期にリスクを避け続け小さく切った食材ばかり食べてきたお子さんが、幼・保育園や学校で初めての食材に出合うことは、大きな危険につながる可能性があります。
ご家族がしっかり見守ることのできる幼少期、安全な環境の中で小さな失敗を繰り返して学習できるようにしてあげましょう。
「0歳からの健口長寿研究会」会長の歯科医師・増田純一氏は、乳前歯が生えるころを「前歯期」と呼び、この時期に前歯で一口量を学ぶことが重要だと唱えています。
またアメリカの児童心理学者で偏食専門家のケイ・トゥーミー博士(Dr. Kay Toomey)は、
・生後10カ月までに固形食を開始していない
・同12カ月までに粒のあるものを食べていない
・同16カ月までに取り分け食に移行していない
これらの場合、食べることを最も学べる適切な時期(臨界期)を逃していると語っています。
さらに乳児保育などを専門とする小児科医の二木武氏は、「咀嚼能力を獲得する臨界期は18カ月ごろまで」と提唱しています。
食べる技術は生まれつき備わっているものではありません。
周りの大人を見て真似て、失敗しながら学習して身につけていくものです。
臨界期を超えていると上達に時間はかかりますが、子どもたちが繰り返し学習して生きる力を身につけるサポートをしていくことが重要。
そのために必要な知識もあるので、家族だけなく専門家にも相談しながらお子さんの笑顔を育んでほしいです。
今回は、食べることの中でもキーポイントとなる「前歯でかじること」についてお伝えしました。
子どもだけでなく、大人も食事で前歯を使う機会が減ってきています。
子どもたちが大人のお手本を見ることなく、かじる必要の感じられない食事を繰り返してしまわないよう、今回のコラムがお役に立てれば幸いです。
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横道由記子
子どものころ、むし歯だけでなく歯並びに悩んで矯正治療を受けた経験から「予防歯科」という言葉に引かれ、地元岡山大歯学部で学び平成年和気歯科医院長となる。
むし歯予防だけでなく、噛み合わせにおいても原因を見つけ治療と合わせて予防していく考え方を学び、医院では我が子の子育てで悩み学んだことを生かして小児歯科・小児矯正歯科を担当。
地域の幼・保育園、公民館での子育て支援事業や、企業主催の教室などで健康なお口と心身を育むサポートを積極的に行っている。
授乳、抱っこ、離乳食、むし歯予防、歯並びのことなど、歯医者さんに聞いてみたいことを公式LINEから無料で相談できます。
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