博物館や美術館など文化施設が集まる岡山市の岡山カルチャーゾーンで現在、「おかやまサムライめぐり」と銘打った連携展示が行われています。
参加施設は、岡山市北区丸の内の林原美術館と岡山城天守閣、岡山後楽園向かいの県立博物館の3施設。初開催となる連携事業では、「サムライ」をキーワードに約3カ月間、甲冑や刀剣、武将画などの歴史資料が展示されています。
今回、小学校に入学したばかりの息子を連れて、林原美術館の企画展「サムライの纏う(まとう)もの」へ行ってみました。
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林原美術館は、岡山の実業家だった故林原一郎氏が蒐集した、日本をはじめとする東アジア地域の絵画や工芸品と、旧岡山藩主池田家から引き継いだ大名調度品を中心とするコレクションによる施設です。
今回の企画展で展示されている甲冑や装束、刀などの多くも池田家のもの。池田家といえば岡山で知らない人はいないのではないでしょうか?1603(慶長8)年、時の将軍・徳川家康の孫・池田忠継が、5歳で祖父から備前国28万石を拝領。その後、閑谷学校(備前市)を開いた光政、曹源寺(岡山市中区海吉)を建立し、岡山後楽園を造園した綱政らへと受け継がれ、今日の岡山の礎を築きました。
受け付けを済まし、展示室へ続く自動ドアをくぐると様々な形、時代の甲冑がずらり!!数もさることながら、本物の歴史資料だからこその“すごみ”のようなものを感じます。今回の展示では、サムライをメインテーマに「甲冑」「能装束」「嗜み」「教養」など、展示物の種類ごとに飾られており、サムライの世界を満喫できる構成になっています。
最初のエリアはずばり「甲冑」エリア。見渡すと、一際目を引く角の伸びた一領が。これは、実質的な初代岡山藩主池田光政が所用していたもの。質素倹約を勧めた光政の気質を表すような漆黒の色合い。鯖の尾と言われる特徴的な兜の形は、池田家の家紋に使われている「蝶」が羽を広げる姿に似ています。
振り返ると、打って変わってカラフルな甲冑。後楽園を造った2代池田綱政の所用品。この綱政の時代に池田家の家紋である蝶のデザインが泊蝶から丸囲みの揚羽蝶に変わっています。梅や桜の柄も入っていて、先程の黒塗りも渋くてかっこいいのですが、色使いが素敵でとてもおしゃれな印象を受けます。
続いては「サムライが身に付けた能と装束」エリア。江戸時代、能は将軍の前で舞うこともあり、武士の必須教養だったそう。岡山藩でも非常に愛好されており、後楽園にも能舞台があります。林原美術館では、装束をはじめとする関連品が豊富にあり、今回展示しているのはその一部。左は桃山時代のもので、花の部分はすべて刺繍。とても手が込んでいますよね!右は竜の柄が織り込まれています。どの装束もデザインや色合いが非常に繊細で、昔にもこんなカラフルな色があったと驚きます。
演目で使う道具も。面は能面と狂言面計4点を展示。若い女性の「小面(こおもて)」や神などを表す「小飛出(ことびで)」。池田家の面には記録が残っており、いつ使われたのかなどがわかるそうです。桜をすくう場面で使用された網には花びらを散らす凝りよう。
教養と武術のエリアでは絵画や手習いなどを展示。左は「画人大名」と呼ばれた3代継政による「聖像」。殿様は身分相応の教養を身に付けるべく、幼いときから書や絵の教育を受けたそうです。お殿様は、絵がうまくなければなれないそうですよー。右は綱政によるいろいろな職人が描かれた作品。1つ聞き馴染みのない“謎な職業”を見つけて盛り上がりました。ぜひ来館して探してみてくださいね。
面白いものを見つけました!今もありますねー!昔の“単語帳”です!光政による「学断札」という一品。表に漢字、裏にひらがなで四字熟語などが書かれています。
最後は刀装具~神仏の加護(刀剣や刀身彫刻)~馬具などへ続き展示は終わります。刀のつばや持ち手の先端の「頭(かしら)」、さやに付属する「小柄(こづか)」など、いずれにも細かな細工が施されています。さりげない部分への気使いに、「サムライもおしゃれだったんだな」と思いを馳せます。ハートマークに見える形は、イノシシの目をかたどった「猪目(いのめ)」とよばれる細工で、魔除けの意味があるそうです。
ほかにも本物の刀剣や書画、目を奪うような香道具など、記事では紹介しきれないほど内容盛りだくさんでした!サムライ、そして歴史の世界にどっぷりと浸かること請け合いです。「サムライの纏う(まとう)もの」は6月17日(日)まで好評開催中(月曜休館)。ぜひ足を運んでみてください。