Home>育てる

[ 育てる ]

絵本作家・長田真作さんの独特な世界観を ママ目線で紐解く

独特な世界観を抜群の画力で表現する、
新進気鋭の絵本作家・長田真作さん。
“新作”「ぬりえ・クエストvol.1&vol.2」の同時刊行記念イベント開催のため、
8月中旬、来岡された長田さんにインタビューしました。
どんな子ども時代を過ごしたのかなと、
長田さんの人柄や魅力に迫ります
≪聞き手:手作り表現ステージママステ 代表・石川智美さん≫

+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-+:-+:-+:-+:-+

長田真作(ながた・しんさく)さんのプロフィール

1989年、広島県呉市生まれ。2014年から独学で絵本の創作活動を始め、2016年に絵本作家としてデビュー。主な作品に、「あおいカエル」(文・石井裕也/リトル・モア)、「タツノオトシゴ」(PHP研究所)、「風のよりどころ」(国書刊行会)、「光と闇と ルフィとエースとサボの物語」(原作・尾田栄一郎/集英社)、「ヒミツのトビラ」(高陵社書店)など。

+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-+:-+:-+:-+:-+

長田さんはどのようなお子さんでしたか?

1つのことに没頭するタイプではなく、いろいろなことをかじり、体験してみて、飽きたらそっと離れるというふうに、楽しいことを転々としていました。学校では、授業がつまらないと思ったら図書館に行って本を読んでいるような子(笑)。学校の授業時間が減り、土日が休みになり、総合的な学習の時間が始まった時代で、一般に「ゆとり世代」と言われますが、先日、ある取材で平成生まれのライターやカメラマンたちと話をしていて、実は抑圧され、生きにくい時代だったんだと初めて気づかされました。でも僕自身、学校に行きたくないとか、息苦しいとか感じたことも全くなくて、きっと自分で楽しくやれる力を持っていたように思いますね

ゆとり世代は自分を表現することが上手だと感じていましたが。

抑圧されていたからこそ、逆に表現することがそんなに上手ではない世代だと僕は思っていて、ゆとり教育といいつつ、内情はひしめき合っていて、その場に即した自分の気持ちよりも、空気を読んだ気持ちの方が優先されるというか。進学しなきゃ、就職しなきゃというのが用意されていて、それとどうつき合っていくかというところで、自分の意志や気持ちを明確に発することができない世代だと。僕は抑圧を感知していなかったからよかったのかもしれないですね(笑)。
今の社会は子どもをみんなで抑え込もうとしていて、子どもも何かに報おうとしているように思います。でも、それは子どもにとって正直余計なお世話。子どもは経験もお金も足りないからいろいろな判断ができず、社会を相手にしたときに通用しにくかったり、成り立たなかったりするわけで、そのサポートに徹する大人がほとんどいないでしょ。むしろ、頭ごなしに「間違っている」「まだまだね」などと否定したりする。すると、面白いことがやりにくくなるんです。屁理屈ではなく、僕は1つ1つが当たり前に感じられなくて、ずっと不思議に思いながら生きていましたね。

長田さんの絵本と出会って、子どもを自由にさせてあげよう、自分は自分でいいんだという思いになりました。読んだ子どもの話を聞くのもとても面白かったです。

僕の絵本って、自分の気持ちと裏腹に生きてきた方、やれなかったっていう何かを持っている方に届いちゃうんです(笑)。抑圧してきた自分の気持ちが「それもいいんじゃん」と呼び起されるみたいで。僕はそんな重いことを絵本に1つも描いていないんですけどね。
絵本が子どもに何かを伝えるというのはナンセンスで、老若男女がいろいろなタイミングで、いろいろな時にいろんな感じ方ができるっていう、割と最強なものだと思うんです。なんせ絵だし、なんせビジュアルだし、文章や流れや気分や文字などが加わって1つの展開や1つのストーリーになっていて、だからどこかで心をつかまれるというか。また、つかまれるところがビジュアルでふやけて、また広がっていくので、いろいろな読み方ができるんです。
僕はこういうことを思って、こういうことを伝えたくて書いた、というのは本当になくて、「子どもには長田さんの本は難しい」と言われることがあるけれど、それはそう言っている方々が勝手に心配しているだけのこと。子どもだって分からなければ自分で調べて分かろうとするし、自分の範疇の中でうまく成長していくと思うんです。

長田さんのご両親はどんな方ですか。

両親は教師です。父親は高校の古文・漢文の先生、母親は特別支援学校の先生で、僕から見ても教師らしくない教師でしたね(笑)。僕がどういうことを考えようが、絶望も称賛もないし、絵本をやっていても「へぇ、そうなんだ」「こういうの売れるの?」っていう感じでいい加減で。だから、僕はこの両親に対して何を反抗するのっていう話で、反抗期がなかった。世間は2歳のイヤイヤ期も反抗期も当たり前にあるものと思っていますが、そういう一般論の形式的なもので人を見るからうまくいかなくなるんじゃないかなと。親子の関係は型にはめるものではなくて、子どもに対して半分はどうでもいいと手放しつつも、親が子どもを人として尊重していればうまくいくんじゃないかなと思います。親や社会があって、それに付随して個人があるという構図がおかしくて、その子があって親や社会があるわけで、その子と社会がどうつき合っていくのかはその子が決めることでしょ。

長田さんにとって面白いと思う絵本とは。

昨年10月刊行の「風のよりどころ」は3、4年前に描いたもので、出版された時とのタイムラグがあるんです。僕も後から見て、絵が怖いな、文章の意味がよく分からないなとか、読者と同じように感じます。自分が描いた後に自分が一番びっくりする絵本が一番好きで、自分がこんなこと考えていたんだと気づくことがとっても楽しくて。僕は楽しいことを転々とするタイプだったと最初にお話ししましたが、絵本もその延長線上にあって、面白いとか、変とか、自分の気分のバリエーションをカタチにできるんですよね。本はそれぐらい個人的なものだから、個人の気分や気配など言語化できないところをくすぐられないと面白くないし、ある明確なものを据えれば据えるほど、2回目が楽しくない。起承転結の記事ではなくて、読んだ時に「は?」ってなるような感じが、自分の本なり好きな作家の本なり、絵本っていいなと。創作だし、エンターテインメントだし、どうせ嘘だろという世界だからこそ押しつけがましくないと思うんです。

「ヒミツのぬりえ工作☆工場+ヒミツのぬりえおしゃべり」レポートはこちら
【絵本作家・長田真作さんらによる ワークショップ&トークショーに行ってきました!!!】

>一覧に戻る

ログインして「コメントを書く」

Access Ranking

Present

プレゼント